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鎌倉、歴史と文化、山と海のある街の魅力解剖

鎌倉はどうしてもこの街に住みたいという根強いファンの多い街。鎌倉幕府以来の歴史、文化の地であり、山も海の両方が楽しめる自然も魅力。そんな鎌倉を全方位からご紹介します。

中川 寛子

執筆者:中川 寛子

住みやすい街選び(首都圏)ガイド

縄文時代から人が住んできた街、鎌倉
発展を遂げたのはご存知、鎌倉幕府以降

鶴岡八幡宮
鎌倉で最も多くの観光客を集める鶴岡八幡宮にも古代の遺跡が眠っている
鎌倉と聞くと誰もが源頼朝に始まる鎌倉幕府によって開かれたと思いますが、実際の鎌倉はそれ以前から人が住んできた街です。山間のハイキングコースとして名高い源氏山公園に隣接する葛原ヶ岡公園周辺からは初期の縄文土器が発掘されていますし、鶴岡八幡宮境内からは弥生式土器も。海があり、安全な高台もあるという地形は古代人にとって暮らしやすい場所だったはずです。

江ノ電沿線
海沿いを走る江ノ電からの風景。目の前に生み、背後に山と自然に恵まれた鎌倉ならではの風景だ
その後、鎌倉幕府がここを政権の地と定めたのもやはり地形によるところが大。交通の要所で、かつ三方が山に囲まれている鎌倉は周囲からの攻撃に強く、戦乱の続く時代には格好の陣地だったのです。しかし、鎌倉幕府はわずか3代で滅び、その後を次いだ北条氏の下の繁栄も室町幕府成立以降は急速に衰退。江戸時代中期に観光スポットとして注目を集めるようになるまでは、農業と漁業を中心とする僻村だったといいます。ちなみに、鎌倉が観光地となったきっかけは17世紀後半に徳川光圀(つまり水戸黄門)が編纂した「新編鎌倉誌」。黄門様が年間2000万人もの観光客で賑わう鎌倉を作ったといえるのかもしれません。

洋館
鎌倉駅近く、御成通りに残された洋館。元々は小児科の医院だった建物で市民が保存を行っている
明治22年には横須賀線が開通、明治、大正、昭和初期と鎌倉は保養地、別荘地として注目を浴び、多くの政治家、財界人、文人その他がここに住まいを構えました。鎌倉には今でも往時の政治家、財界人などの邸宅を利用した美術館や記念館などが点在していますが、その多くはこの時代に建設されたもの。寺社の和風建築に加え、鎌倉は明治から昭和の始め頃に建てられた洋館の街でもあるのです。

湘南新宿ライン
ゆったりと座って通勤できると人気の湘南新宿ラインのグリーン席。朝は仕事の資料などを広げている人も多い
さらに、鎌倉を通勤可能エリアとしてこれまで以上に印象づけたのが2001年に登場した湘南新宿ラインです。この路線の登場で鎌倉は東京駅のみならず、渋谷、新宿、池袋などと直接結ばれることとなり、利便性は大幅にアップ。本数はそれほど多くないものの、成田直行路線もできています。また、このラインにはゆったりと座れるグリーン席があるため、約1時間と通勤時間は短いとはいえないものの、その時間を有効に使えると、ビジネスマンに人気です。

自然と美味に恵まれた、
四季を感じられる街

緑の濃い住宅街
緑が豊富なのはメリットだが、反面トビや台湾リスが繁殖、被害も出ている
駅から少し離れれば、緑の濃い鎌倉です。四季の移ろいはどこにいても感じることができます。寺社の中にはあじさい寺と呼ばれる明月院のように、季節の花を別名に持つ寺もあるほど。また、お祭りや花火大会、薪能などイベントもあれこれ行われており、地元のイベントめぐりをしているだけで休日を豊かに過ごせます。美術館その他、文化的な施設が多いのも歴史のある街ならでは。文化が身近なのです。また、緑が多い効用でしょう、東京中心部の8月の平均気温が29度になっているのに対し、鎌倉市では26.8度。過ごしやすい気候になっています。

マリンスポーツ
湘南では1年中マリンスポーツを楽しむ人が多い
海が近いことから、サーフィンなどマリンスポーツ好きの住民も多く、関連の店も多数。特に江ノ電周辺は海に近いことから人気で、朝海に出てから出勤するというライフスタイルの人も少なからずいらっしゃるとか。海辺ではサーフィン以外のスポーツも盛んですし、夏には花火大会やタイ屋台村などが地元のお楽しみです。

地元産の野菜が並ぶ即売所
地元鎌倉産の野菜が並ぶ直売所。作った人の顔が見える安心感がある
海、山があり、歴史がありとくれば、食にも恵まれているのは当然のこと。鎌倉駅近くには観光客も立ち寄る農協の直売所がありますし、漁協も直売所を設けており、取れたてぴちぴちの魚が手に入ります。その素材を生かし、鎌倉には和食、イタリアン、フレンチなど様々なジャンルの店が点在。舌の肥えた住民が多いこともあり、ハイレベルな競争を繰り広げています。魚介、野菜だけでなく、甘いものにも名物が多いのも有名なところ。何を食べるにせよ、グルメにはウレシイ街なのです。

湘南モノレール沿線
湘南モノレール沿線には高台で海の見えるような場所も
また、同じ鎌倉市内でも場所によって街の雰囲気が異なるのも面白いところ。海沿いの明るい、活気に満ちた街もあれば、山中の森閑とした佇まいの街、眺望の良いお屋敷街などなど、住む場所によって暮らしも変わりますから、あちこちを見て選ぶ楽しさがあります。

景観に気を遣う、
環境問題に高感度な人が多い街

鎌倉の街並み
風情のある通りが、ごく普通の住宅街の中にあるのが鎌倉の魅力。どこを歩いても楽しい
美しい街並みを残そうと、この街には景観に関する規制がいくつもあります。そのため、家を建てる際には自分の好きにというわけにはいきませんが、この街を選んで住んでいる人たちは「今の景観があってこそ鎌倉」という意識が強いようで、それに対する不満は聞こえてきません。景観は住む人全員で守っていくべき共有財産という認識が共有されているのでしょう。

鎌倉駅
住宅街はもちろん、駅周辺その他繁華なエリアでもゴミが放置されているような場所は見当たらない
鎌倉は環境問題にも意識の高い街。全国平均のゴミのリサイクル率は20.3%だそうですが、鎌倉市はなんと47.6%。平成16年度以来、4年間連続で全国1位をキープしているといいますから脱帽です。これも美しい街を守ろうという意識から派生しているものでしょう。

風情のある家
古民家を改装してアトリエやショップにする人も増えており、絵になる店が多い
古民家など風情のある物件が残されているのも鎌倉に住む魅力。昔からの大家さんが持ちきれなくなり、でも、景観を壊すような開発をされたくはないと、賃貸あるいは定期借地権で市場に出ている物件が意外にあるのです。もちろん、古い家ですから、メンテナンスは必要ですし、場合によっては隙間風に悩まされることもあるかもしれませんが、好きな人にはたまらない暮らしが実現できます。

といっても、良いことばかりではありません。続いて鎌倉のちょっとうれしくない点も見てきましょう。

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