敷金精算に関する原則や考え方を宅地建物取引業者が説明することが義務付けられます。 |
今回は賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)が施行されるようになった経過をまとめてみよう。
敷金ってそもそも何だろう?
入居者は住居を借りる際、敷金を貸主に預け入れる。敷金は礼金と違い、退出時に入居者に返金されるという性質をもつ。しかし、全額が返金されるわけではないため、これまで敷金の返還については貸主と借主間のトラブルの原因になっていた。そもそも、敷金とは、「借主が借りた家屋を明渡すまでに生じた貸主に対する一切の債権を担保するもの」と定義される。
つまり敷金とは、「貸主に、何かあったときのために預けておくお金」であり、借主が賃料を未納している場合や、借主が通常の使用を超えるような使用をしたことによる家屋の損耗等を復旧する場合に使われるものだ。けして原状回復費用に当てられるものではない。
貸主・借主の認識の違い
なぜ敷金返還に関するトラブルが起こるのだろうか?それは、入居時に取り交わす賃貸借の契約書に退出時の原状回復に関する明確な規定がなく、貸主・借主の双方が自分にとって有利となるような解釈をするためだ。敷金の返還について、契約書には、「敷金は、原状回復を終えた後、借主の負担すべき工事費・修繕費等があれば、それにかかった金額をさしひいた残額を返金する」といったようなことしか書かれていない。
そのため、貸主・借主に認識の違いが生じるのも無理はない。このような認識の違いから退出時には敷金の返還に関するトラブルが多発してきたのである。
消費者保護法・小額訴訟法
平成13年4月には消費者契約法が施行され、消費者の利益を一方的に害する賃貸借契約書は、無効になることになった。さらに、平成10年10月に創設された少額訴訟制度は、平成16年4月に上限がひきあげられるなど、消費者保護の考え方が浸透してきている。国民生活センターにおける敷金問題の相談件数は平成10年度に比べると4倍にもなっているという。これはトラブルの発生件数が増えたのではなく、消費者の権利意識が高まった現れといえるのではないだろうか。「敷金の性格」や「原状回復の意味」をうやむやにしたまま契約し、退去時にはごまかしながら敷金精算するという手法はもはや許されない状況となってきているのである。
事実、過去の事例をみると、敷金の返還請求に関しては、貸主はほとんどの場合借主に負けているのが現状である。
このような流れの中で、さらに10月1日より賃貸住宅紛争防止条例(東京ルール)が施行される。
これは借主と貸主の退去に関する負担について明示したものになっている。入居する側の意識の高まりと、それを支援するような法律の制定があったとはいえ、今までは入居の契約に際してはあいまいな文書を取り交わすだけであった。
それが今回の条例により、入居者に対して重要事項の説明の前に、退去時の負担について説明することが義務づけられたのである。
次回は、東京ルールの具体的内容について解説しよう。