企画者が留意すべき「落とし穴」とは!?
この「落とし穴」、運悪くはまってしまうと、結果的に工事費が高くなってしまったり、工期が大幅に遅れてしまう可能性があります。その原因はVE(バリューエンジニアリング)提案時期の変更です。
VEについては2005年6月5日の記事でもご紹介しておりますが、今回の法改正に伴い、このVEを仕掛ける時期にも注意が必要となってきます。
設計施工で進める場合は、それほど問題にならないかも知れませんが、設計と施工を分けて発注している場合、いままでより、最低2ヶ月は工程に余裕を持ってスタートさせることが重要となります。
いったいどういうことなのか。まずは、確認申請に関する従来の流れと、今後の流れ(予測)をご覧ください。
【従来の申請の流れ】 【今後の流れ(予測)】
1 実施設計 1 実施設計
2 確認申請 2 工事見積り依頼
3 工事見積り依頼 3 価格交渉(VE提案含む)
4 価格交渉(VE提案含む) 4 施工業者選定
5 施工業者選定 5 実施図面修正
6 実施図面修正(補正) 6 確認申請
7 確認許可 7 確認許可
8 着工 8 着工
この違いが分かりますでしょうか。
今までは、確認申請中に、施工業者に工事見積りを依頼し、見積り額の状況を見ながら、VE提案とともに工事費の価格交渉を行い、十分に工事費を詰めた上で施工業者を選定することができました。
当然、VEで修正になった図面は、あとで「補正」して対応していました。つまり、とりあえず確認申請を提出しておいて、同時並行でじっくりと工事費を詰めることができたのです。
ところが、今回の法改正により、「軽微な変更」を除き「補正」による対応ができなくなる可能性があるのです。実は、この「補正」の廃止が、あなたのアパ・マン建築計画の工事費に大きな影響を及ぼす可能性があるのです。
「工事費」と「価格交渉」の時間の相関関係
確認申請の「補正」が認められないと、修正があった場合には申請を出し直ししなくてはならなくなります。そうなってしまうと、工期が大幅に遅れるほか、再申請に余計なお金がかかってしまいます。
正直のところ、まだ法施行以降の実例が少ないため、どの程度の修正を「軽微な変更」として判断してくれるのか、今後の事例を注視する必要がありますが、とりわけ、構造に関する変更があった場合、おそらく補正で対応するのは難しいでしょう。
ですから、再申請になるリスクを避けるのであれば、予め「見積り依頼」「価格交渉(VE)」「業者の選定」と「図面の修正」のすべてを終了させた後に確認申請を出すほうが無難といえます。
ということは、確認申請に先立って、価格交渉を行い、じっくりと工事費を詰めるための時間的余裕を最低1~2ヶ月位は見込んでおく必要があります。
なぜなら、一般的に言って、工事費は、価格交渉の時間の長さに比例して低くなります。というのは、VE提案などを受けて、コスト面で色々な工夫ができるからです。
しかしながら、この価格交渉を行う時間的な余裕がなければ、土壇場になって、工事費が詰めきれず工事費が高くなってしまったり、作業工程にズレが生じてしまう可能性もあります。これが法改正に伴う「落とし穴」の正体なのです。
ですから、このような「落とし穴」に陥らないためにも、今後確認申請を行う地主さんは、設計担当との打合せを密にしていただき、工程の組換えなどに注意しながら、極力変更などが生じない段階まで設計を煮詰めて、確認申請を行うことをお勧めいたします。
また、実際の法律の運用状況はまだ未知数です。今回お伝えしたほかにも、思わぬ「落とし穴」があるかも知れません。是非とも、気をつけて企画を進めてくださいね。