リタイアのきっかけは愛犬の病気

軽井沢に来て健康を取り戻したウィルとジュリア。今では「カフェ・カーム」の看板犬だ


広告関係の会社を経営していたNさんが、リタイアを考えたのは2年ほど前のことです。当時、家族の一員として可愛がっていたフラットコーテッドレトリバーの愛犬ウィルとジュリアン。そのウィルが8歳の時、悪性の腫瘍と診断されたのがきっかけになりました。もう長く生きられないなら、できれば空気のいい場所で過ごさせてやりたい、そう思ったのです。

山や川のある、自然に囲まれた空気のいい所に住みたい。大学時代にワンダーフォーゲル部だったご主人は、その頃よく登った信州の山々を思い浮かべたそうです。夏と冬には高峰高原ロッジでアルバイトをしたこともあり、小諸は思い出の場所。そんな所で暮らせたら……とも思いましたが、リタイアしても年金が出るまでにはまだ数年もあります。生活をどうするかも考えなくてはいけません。
「仕事もしたかったんです。そこで、夫婦ふたりでできることを考えたとき、思いついたのがカフェだったんです」。

いろいろ考えた末、お二人が定住の場所として選んだのは、軽井沢です。
そうと決まれば、犬の病気もあるし、軽井沢の不動産会社を訪ね、すぐ土地を探し始めました。

条件はカフェが開けることと、国道沿いは避け、静かな森の中にあること。
「おしゃれな店を開きたいから、まわりの環境も大事だと思いました。だから、国道沿いのような場所でなく、環境が整った別荘地限定で探しました」。

そして、ようやく見つけた南原の土地。塩沢通り、地元では通称「グルメ通り」と呼ばれる、高級レストランが点在する通りから少し入ったところです。「犬の病気もあるし、できるだけ早く住みたいという気持ちでいっぱいでした」とNさん。土地を購入した不動産会社から地元の建築会社を紹介してもらいました。
おしゃれな軽井沢・塩沢通りにほど近い「カフェ・カーム」外観


設計は奥様が担当。もともとインテリア関係の本を見るのが好きということもあり、自ら図面をひいて設計士に相談。1階がカフェ、2階に写真スタジオと自宅、庭の一角にはドッグランのある家が、約1年で完成。2005年10月に軽井沢の住民になりました。2階の写真スタジオは、もともと写真が大好きなご主人が、犬のフォーマル写真撮影用にと用意したスタジオ。愛犬のきちんとした写真を残したいという人に好評です。

メニューは山登りで覚えたオリジナルカレー

「カフェ・カーム」自慢のオリジナル野菜カレー。刺激的な辛さがやみつきになりそう。器は奥様の手作りです


オープンした店の名前は「カフェ・カーム」。「静かな」という意味で、木立のなかの軽井沢にぴったりの名前です。

お店を開くために何か勉強をされたのですか?と聞きましたら、「コーヒーのメーカーさんにコーヒーと紅茶の入れ方を教わっただけ、あとは自己流です」とのこと。とはいえ、メニューにはカレーやランチプレート、手作りケーキなどが並んでいます。

「カレーは私の担当。大学を卒業して3年目にヒマラヤに登ったんです。その時、一緒にいたインド人が毎日毎日カレーを作るものだから、さずがに作り方も覚えました。ここでは日本人向けにアレンジしていますよ」とご主人。私もいただいたのですが、これが辛くておいしい! とても素人が作ったとは思えない味です。

またプレートランチは、スープや生春巻きなど数品が彩りよく並んでいて、女性好み。ケーキとプレートランチが奥様の担当です。「普通のキッチンで作れるもので、やっていこうというのが基本ですから」、というように厨房は普通のシステムキッチンです。また料理の器は、ほとんどが奥様の手作り。「昔、浦和にいたころに陶芸を習っていたのですが、それがこんな風に使えるとは思ってもいませんでした」と奥様。グラスにおしゃれな模様が施されていますが、このグラスリッツェンも奥様の得意分野とか。お店の小物ひとつひとつに温かみが感じられます。

「このあたりは高級なお店が多いので、ウチみたいに普通のおじさんとおばさんがやっているお店はめずらしいんです」とも。それがかえって、評判を呼んでいるようです。
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