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「敷引き特約は有効」-業界に激震走る!(2ページ目)

最近、業界を騒がしている更新料をめぐる裁判に続き、敷金に関する訴訟でも様々な判決が出ています。敷金も貸主・借主にとってトラブルになりやすい事項ですが、今回は貸主勝訴の珍しい判決となりました。

加藤 哲哉

執筆者:加藤 哲哉

賃貸・部屋探しガイド

特約は有効だったのか?


敷金をめぐる裁判は、近年では借主が優位になることが多く、今回のように貸主が勝訴することは珍しかったので、この判決は話題となりました。争点となったのは、「特約が有効だったのか」と「消費者契約法10条に違反していなかったのか」という点。

敷金をめぐるトラブルでは、賃貸借契約を交わす際にどこまで事前に明確にしてあったか、またその内容が借主にとって不当なものではなかったかが問題となります。たとえば、「自然損耗や通常損耗の原状回復費用は貸主負担、故意・過失による修繕費用は借主負担」程度の文言で契約を交わしていたとすると、退去のときにトラブルになることがあります。なぜなら、具体的にどのような修繕費用が自然損耗であり、故意・過失による破損なのかが明確ではなく、人によってその解釈がマチマチになることがあるからなのです。
そこで、賃貸業界では賃貸借契約の内容を見直し、より具体的で分かりやすい契約書を作成する方向になっており、今回のケースでも特約として明記されていた借主が費用負担する通常損耗分の範囲が具体的であったことが、判決の決定理由になったようです。
さらに、その内容に関心が高まっています。なぜなら、特約の内容は「退去時に通常損耗・自然損耗の原状回復費用を保証金から控除すること」になっていたのです。近年の賃貸業界の常識では、「自然損耗の原状回復費用は明らかに貸主負担」というのが常識であり、今回のようなことが認められることは考えられなかったからなのです。

※特約内容
<損耗・毀損の事例区分一覧表の一部を抜粋>
◎借主の負担となるもの
・カーペットなどに飲み物などをこぼしたことによるシミ・カビ
・引越作業で生じた傷
・フローリングの色落ち(入居者の不注意があった場合)
・キャスター付き椅子によるフローリングの傷へこみ
・タバコなどによるコゲ跡
・台所の油汚れ
・落書きなど
・タバコなどのヤニでクロスの張り替えが必要な場合
・飼育ペットなどによる柱の傷
◎貸主の負担となるもの
・畳の裏返し・裏替え
・フローリング・ワックスがけ
・家具の設置によるカーペットの凹み、設置跡
・畳の変色、フローリングの色落ち(日照、建物構造欠陥による雨もりなどで発生したもの)
・テレビ、冷蔵庫などの後部ヤケ(いわゆる電気ヤケ)
・壁に貼ったポスター、カレンダーなどの跡
・クロスの変色(日照などの自然現象によるもの、電気製品によるヤケ跡)
・網戸の張り替え
・全体のハウスクリーニング(専門業者による)
・消毒(トイレ、台所)
・浴槽、風呂釜などの替え(破損はしていないが、次の入居者確保のために行うもの)
・鍵の取り替え(破損、鍵紛失のない場合)


これらの区分のうち、「貸主負担」とされている部分を保証金から控除すると特約には定められています。その内容を見ると、これまで貸主の費用負担であると考えられていた損耗分までが保証金の控除額に入っているのが驚きです。

>>>判決の決め手は・・・?
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