円高の原因は?
現在の円高の原因は円が高くなっていることではなく、米ドルが安くなっていることです。これは実質実効為替レートをみてみると明白なことです。実質実効為替レートとは、主要15カ国通貨を加重平均し、さらに物価調整したものです。ある時点を100(図では2005年=100)として指数化したもので、通常見るドル円レートと逆に数字が上に行くほど円高、下がれば円安と読みます。一般的に円の為替レートといえば、対米ドルのレートが取り上げられるのが一般的ですが、米ドルとのレートの場合、米ドルが極端に安くなったり、高くなったりした場合に、米ドルの反相関関係を表すだけの為替レートになってしまい、世界の中で円がどのように動いているかを正確に把握することができなくなります。そもそも円高、円高と言われますが、実質実効為替レートを見ると実のところそれほど円高にはなっていないことがわかるのです。■実質実効為替レートの推移
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今起きている事は、価値の減り続ける米ドルが根本的な原因となっている米ドル安であり、米ドル紙幣一枚あたりの価値が下がる分、名目上の円の価格が上昇しているのです。あくまで目に見える名目上の為替レートの上昇であり、実質的はそれほど円高にはなっておりません。ただし、日本円は他の通貨より安全と思われて、ほかの通貨より高くなっている点は確かにあるかと思います。円の実質実効為替レートで見ると、現在の水準は2004~2005年当時と同じであり、過去最も名目上円高となった1995年(1ドル79円台)からすれば、実質的には4割以上円安なのです。
最新月の実質実効レートはまだ発表されていませんが、105程度です。これは2005年よりも5%円高であることを示しています。ちなみに、2004年半ばも105前後でしたが、当時ついていた表面上の為替レートは1ドル110円ほどでした。現在1ドル85円と、当時より30%ほど名目上円高になっていますが、物価水準を調整すれば当時と同じほどだということです。つまり当時1ドルだったアメリカの製品が、この間のアメリカの物価高によって平均的に30%上昇して1.3ドルになったとして、一方で、日本の物価はデフレもあって全く変わらなかったとすれば、名目のドル円レートは85円で計算が合います。なぜなら、当時1ドルだったものは、当時のレートでは110円で買えたわけですが、現在1.3ドルに値上がった全く同じものも、現在のレートで考えれば、ほぼ同じ110.5円(=1.3ドル×85円/ドル)となるからです(もちろん、実際にはこれほど単純ではなく、15カ国全てを計算しなくてはなりませんが、理解の為、簡易的な説明をしています)。
従って現在の円高の本質は円の上昇にあるのではなく、ドルの希薄化にあるのです。昔100ドルで買えたものが、ドルの価値が下がった事で今は130ドルでなければ買えなくなっており、各国通貨はそれに応じて切上げられなければならないのです。米国は長年経常赤字を垂れ流した上に、最近では財政赤字も凄い増え方です。さらに大量のドル紙幣を印刷していますので、それらのどれもがドルの価値を下げることに繋がります。円は少し今の安全資産重視トレンドで重宝されている分だけ割高ですが、実際にはドルの希薄化が名目上の円高を起こしているのであり、これの大局的な流れは為替介入では止められないと考えます。