大人なのに注射が怖い? 「注射恐怖症」の可能性も
注射に対して不合理で理不尽な程の恐怖を感じる場合は注射恐怖症の可能性があります
- 注射で痛い思いをした事がある
- 注射針のように先端の尖ったものに危険を感じてしまう
- 注射で痛い思いをすると罰のように感じてしまう
注射恐怖症の症状……強い不安感・動悸・吐き気など
注射恐怖症はその名の通り、恐怖を感じる対象が注射に特定している恐怖症です。恐怖症は人口の約1割に見られ、女性は男性の約2倍ですが、注射恐怖症に限ると男女ほぼ同数の比率になっていて、多くの場合、5~9才から始まります。注射恐怖症に限らず恐怖症では恐怖の対象に接すると、以下のような強い不安症状が出現します。- コントロールの出来ない強い不安、恐怖感
- 動悸
- 発汗
- 呼吸が速く、息が苦しくなる
- 吐き気
- 体の痺れ
- 胸が締め付けられるような不快感
- 気が遠くなる
注射恐怖症は家族で遺伝する? 迷走神経反射の強い体質など遺伝の関与も
注射恐怖症では動物、雷、高所などに対する他の恐怖症と比べて、遺伝性が高くなっています。注射恐怖症の多くの方は家族や親戚に注射恐怖の強い人がいます。注射恐怖症の遺伝性には血管迷走神経反射と呼ばれるものが関わっています。血管迷走神経反射とは不安を覚えた時、痛みを感じた時、疲労している時などに、迷走神経を介して、反射的に血管壁のトーンが緩んでしまう現象です。血圧低下、徐脈などが生じ、急に頭から血が引いていく感じがしたり、重い場合は、気を失ってしまう事があります。
血管迷走神経反射の強さは基本的に遺伝子によって決まっているので、元々、注射に対して不安や恐怖を感じている人が、もしも、血管迷走神経反射が強い体質であったなら、注射中やその直後に血管迷走神経反射が生じやすくなり、その不快感が注射への恐怖をより強めてしまい、注射恐怖症が生じやすくなります。
また、精神分析の大家フロイトによると、恐怖症の発症には幼少時に見られるコンプレックスが関与しています。その説明として、フロイトは、馬を恐れる男の子の例を挙げています。母親への憧れを父親から罰せられる事を恐れていた男の子は、父親への恐れを意識に出す事ができないので、父親の変わりに馬を恐れる対象として選んだのです。
同様の説明を注射恐怖に関して行ってみますと、例えば、父親が医師だとして、注射への恐怖心は、父親から母親への憧れの気持ちを注射でお仕置きされるという意識下のイメージから生じていると言うのはどうでしょう? 実際は、フロイトが馬を恐れる男の子に対して行ったように精神分析で心の奥深くを探る必要があります。
注射恐怖症の治療法は「慣れること」が基本
怖いものへの対策は基本的には避けるか慣れるかの2つです。注射は予防接種、健康診断、薬物治療などで不可欠なものですので、注射恐怖から注射を受けられなくなってしまうと、健康管理に大変不利です。やはり、注射は受けなくてはならないものです。一般的に、恐怖症の治療は、心理療法によって恐怖の対象に接する事によって、慣れていく事が主体です。不安症状が強い時や恐怖症の背後にうつ病が隠れている場合は薬物療法も必要になります。
注射嫌いの方は注射を受ける日が迫って来るとその事が頭から離れない、予防接種の当日、学校や仕事をサボってしまった、注射の怖さや不安を抑える為にアルコールを飲まずにおれなかったといった事はないでしょうか? もしも、注射への恐怖が度を過ぎていると思えるようでしたら、是非、精神科や神経科で相談してみましょう。
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