子供の病気/プール熱

なぜ秋に大流行?「プール熱(咽頭結膜熱)」の原因・症状・予防法

【医師が解説】「プール熱」とは、「咽頭結膜熱」という感染症で、夏場やプールに限らず、いつでもどこでも感染・流行する可能性があります。2023年は9月から大流行しています。咽頭炎、結膜炎、40度以上の高熱が主症状で、特効薬となる治療法がないので、予防が重要です。プール熱の感染経路、主な症状、治療・予防法、出席停止期間、大人に感染した場合の症状について解説します。

清益 功浩

執筆者:清益 功浩

医師 / 家庭の医学ガイド

秋に大流行しているのはなぜ? 「プール熱(咽頭結膜熱)」とは

風邪を引いている親子のイメージ

子どもから親に感染することもあるプール熱(咽頭結膜熱)。夏以外の季節に流行することもあります


「プール熱」は、正式名は「咽頭結膜熱(いんとうけつまくねつ)」と言います。プールで感染することが多いため、一般的に「プール熱」と呼ばれていますが、感染経路はプールだけではありません。いつでもどこでも感染する可能性があると考えましょう。プールに入っていないから、プール熱になるはずがない、という認識は間違いです。

プール熱は夏に流行することが多いですが、2013年は冬に流行が見られました。以降、冬に見られるようになりました。2023年は夏に流行した後、例年通り少し減少傾向になりましたが、一転して感染者が増え、9月から大流行しています。

この背景として、新型コロナの流行により感染症対策が強化されていたために、2020年はほとんど流行が見られず、2021年、2022年も例年より感染者が少なかったことが考えられます。これにより抗体を保持している人が少なくなったために、現在の大流行が起きている可能性があります。加えて、2023年は、3月からコロナ対策が緩和されて行動範囲が広がったことも、原因の一つでしょう。

プール熱の感染経路、主な症状、診断方法、治療・予防方法、また出席停止の有無についても詳しく解説します。

<目次>  

プール熱の原因

プール熱はアデノウイルスというウイルスが原因で起こります。アデノウイルスは、1953年にヒトのアデノイド(のどのリンパ組織)を培養しているときに発見されたことに由来しており、強い感染力を持っています。
 

プール熱の感染経路

感染経路は、唾液などを介してうつる飛沫感染と、密接に近くにいることでうつる接触感染です。感染力はかなり強いため、家庭生活を共にしている兄弟姉妹間でうつることも多いです。目やに(眼脂)などにも感染力があり、ウイルスはノドや目から体内に侵入します。
 

プール熱の潜伏期間

感染から発症するまでの潜伏期間は、5~7日間。夏に多く、幼児から学童までに多く見られます。
 

プール熱は大人にも感染するのか

一言で「アデノウイルス」と言っても、実は多くのタイプがあります。そのため、風邪やインフルエンザと同様、あるタイプのアデノウイルスに感染しても、別のタイプに感染することもあります。つまり、1度感染しても安心はできず、複数回感染してしまう可能性があるということです。

1つのアデノウイルス感染しても何回か感染することがあります。そのため、大人も例外ではありません。一方で、大人の場合は、主に自宅内で子どもから感染するケースが多いようですが、子どものように集団で大人に流行することは少ないです。大人は過去に複数回アデノウイルスに感染していることが多いので、子どもに比べてかかりにくいと考えられます。
 

プール熱の主な症状は「発熱・結膜炎・咽頭炎」

目からも感染しますので、タオルなどの共有は辞めましょう

目からも感染しますので、タオルなどの共有は控えましょう

プール熱の正式名称である「咽頭結膜熱」という名前の通り、発熱、結膜炎、咽頭炎が主な症状となります。

■発熱
40度前後の高熱で5日前後続きます。

■結膜炎
結膜炎に伴い、結膜充血(眼の白みの部分が充血する)、目の痛み、かゆみの症状が出ます。また涙や目やに(眼脂)が多くなります。

■咽頭炎
ノドの痛み「咽頭痛」や、ノドの腫れや赤くなる「咽頭発赤」が現れます。

この他、全身倦怠感、頭痛、食欲不振なども見られます。発熱は39度以上で5日も続くことがありますが、治るとスゥーと下がることが多いです。時に肺炎を起こすことがあるので、注意が必要です。
 

プール熱の検査法・診断法

まず、アデノウイルスへの感染を調べる必要があります。アデノウイルスの確認は、迅速キットか血液検査によって行われます。

迅速キットの場合、ノドを綿棒でこすって検査を行います。数分から数十分程度でキット(キットの反応時間は多くは5~10分以内)が「+(陽性)」になれば、アデノウイルスがノドにいることがわかります。現在はほとんどこの方法で検査が行われます。

血液検査は、検査結果が出る頃にはすでに治っている場合が多いので、実際、現在の診療現場では使われていないことが多く、肺炎などの合併症のある時に使われます。最初の血液検査でアデノウイルスに対する抗体が非常に上がっているとわかった場合、2週間以上あけて2回目の血液検査を行います。1回目より2回目で抗体が上がっている場合はアデノウイルスの感染であったと判ります。しかしこの検査では、結果が出るまでに時間がかかってしまい、アデノウイルス感染症であったことを事後的に確認する検査になっています。アデノウイルスについてPCRによる遺伝子検査が可能ですが、保険で検査はできません。

上記の方法でアデノウイルスへの感染がわかり、さらに高熱、ノドの赤み、結膜充血などの症状がある場合、プール熱と診断されます。
 

プール熱の治療法は? 治療薬と家庭でできる対策法

アデノウイルスに対する特効薬はありません。病院で処方される治療薬と自宅で休養する際の注意事項についてご説明します。

■病院で処方される治療薬
  • 高熱でつらい時→解熱薬 ※時間が経って薬効が切れると再び発熱します
  • ノドの痛み→うがいや鎮痛薬
  • 目やに(眼脂)や眼球結膜充血→抗生剤やステロイドの点眼薬
  • 眼のかゆみの強い時→抗ヒスタミン薬やステロイドの点眼薬

■自宅で気をつけること
  • 安静と十分な睡眠で免疫力が落ちないようにする
  • 水分補給を行う

特に、脱水を防ぐための水分補給は大切。ノドの痛みがあり飲みにくい場合は、ノドごしのよい飲料で、できれば電解質を含む飲料がお勧めです。下痢などの症状がない場合は、少し冷たい飲料の方が飲みやすいかもしれません。

発症後は特効薬がなく、自然治癒を待つしかないので、症状を抑えることと免疫力を高めることが大切です。普段から手洗い、うがいで予防に努めるようにしましょう。
 

プール熱は予防が大切! 手洗い・うがい&身の回りの消毒を

プール熱には特効薬がないため、予防が大事になってきます。原因であるアデノウイルスが感染力が強く、手による接触感染やツバなどにより飛沫感染するため、第一に感染者との接触を避けることが大切。

身の周りの消毒が大切で、手洗い、アルコールや石鹸で指の間までしっかりと洗浄消毒する手指消毒を行います。子どもの場合は、おもちゃなど、触れるものへの消毒も可能ならしておいた方がよいでしょう。

さらにノドへの感染ですから、うがいも大切です。特にプールの際は、水泳前後のシャワーと、プールの後のうがいなどを徹底しましょう。タオルや寝具などの共用は避けた方がよいでしょう。
 

プール熱で出席停止になった場合の登校目安

プール熱は学校保健法で第二種伝染病に指定されているため、感染がわかった場合は「出席停止」になります。発熱や眼球結膜の充血、ノドの痛みなどの主要症状が無くなってから2日間経過すると、学校などは登校可能です。成人でもこれに準じていることが多いかもしれませんが、職場の方針によります。
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