スキルス胃がんとは……初期症状がほとんどない
食欲不振、体重減少など、普段よく経験する何気ない症状が胃がんの初期症状であるケースは少なくありません。
スキルス胃がん。ドラマや映画で、進行した胃がんの例として聞くことがある病名です。スキルスとは「硬い」という意味ですが、その名の通り胃の壁全体が硬くなるのが特徴です。
通常、がんは粘膜面に発生します。胃がんなら、胃の粘膜に最初の兆候が現れ、発生したがん細胞は、浸潤と言って周りの細胞にしみこむように広がると共に、増殖してかたまりを作ります。この過程で、胃の粘膜から出血したり、胃潰瘍などの症状が出ることがあります。通常は、がん細胞のかたまりは粘膜から隆起する形で出てきますので、胃カメラやバリウムの検査での早期発見は可能ですし、内視鏡下胃粘膜切除術など胃カメラによる治療も可能で、治療成績の向上につながっています。
しかし、スキルス胃がんは粘膜から隆起することなく、粘膜の下を這うように広がっていきます。よって、粘膜が荒れるために出てくる胃炎や胃潰瘍のような症状にも乏しく、初期では自覚症状がほとんどないのが特徴です。よって、発見された時には、胃の粘膜の下で胃全体に広がっていることがしばしばあり、治療成績が良くない原因になっています。
スキルス胃がんの進行と症状
何となく食欲がない、胃がもたれる、といった一般的な症状が多く、スキルス胃がん特有の症状はありません。病状が進行してくると、胃全体が硬くなり、食物をたくさん受け入れられなくなるため、食欲低下や体重減少が起こってきます。
また、胃の内側から外側に向かってがん細胞が広がった結果、胃を覆っている膜を越えてしまうと、お腹の中全体にがん細胞がちらばってしまうケースがあります。これを腹膜播種と言いますが、このような場合には下痢止めや便秘薬ではあまり改善されない下痢や便秘の症状が見られるようになります。
つまり、特有の症状はないものの、食欲不振、体重減少、便通異常といった体調不良が続くケースが多いと言えます。
スキルス胃がんの検査法……胃カメラ、バリウムなど
胃がんの検査は胃カメラが非常に有効。粘膜の下を這っていくスキルス胃がんの場合は、胃全体の形や動きが見られるバリウム検査も有効です
スキルス胃がんの検査法は、他の胃がん同様、胃カメラとバリウムです。ただ、粘膜の下を這って広がっていくので、胃カメラではなかなか発見されにくいケースもあります。
比較的多いのは、バリウムを飲んだ時に、胃の壁が固くなっているために、胃の動きが通常と違うことが確認され、早期発見につながるというパターンです。
また、残念ながら、腹膜播種によって腹水が発生していて、CTや腹部超音波検査(エコー検査)で発見される例や、肝臓や肺への転移巣が先に見つかって色々調べていく過程で発見される例もあります。
スキルス胃がんの治療法……手術、抗がん剤、放射線治療
治療法は他のがんと同様。手術、抗がん剤治療、放射線療法の3大療法を組み合わせ、がんの進行度にあわせて行っていきます。
他の臓器に転移がないと判断された状態では、まず手術を行いますが、胃での広がりが進んでいる場合は、先に点滴や内服薬での抗がん剤治療を行ってから手術を予定するケースもあります。
スキルス胃がんの予防法
自覚症状や生活習慣、がん家系など少しでも気になることが有る場合には、まずは、お近くの内科を受診されることをお勧めします
スキルス胃がんに限らず、40歳を越えてからは定期的な健康診断が早期発見、早期治療に有効です。胃カメラやバリウムだけで発見が容易ながんではありませんが、食欲不振や体重減少など、気になる症状があればそれを問診用紙に記載し、検査医に伝えることは重要だと思います。もちろん、喫煙や過度の飲酒など、がんを誘発すると考えられている生活習慣を是正されることはスキルス胃がんの予防にも有効です。
また、遺伝について明確な遺伝因子としてコンセンサスを得られているものはまだないようですが、一般的にがんの遺伝は複合遺伝。単に遺伝ではなく、体質や生活習慣全体が発がんに関与していると考えられています。
ご自身のご家族、兄弟姉妹でのがんの発生がある場合や、上記のような気になる症状があるなど少しでも心配がある場合は、お近くの医療機関に相談することをお勧めします。
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