感染症/動物の感染症 (狂犬病・BSE・口蹄疫)

狂犬病の治療法・予防接種

狂犬病は発症してからは治療法がありません。動物に噛まれた場合は傷口をまず洗浄します。動物に噛まれた後のワクチン接種(暴露後ワクチン接種)が発症予防に有効です。流行している地域へ長期間滞在する場合は事前の接種が薦められています。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

犬や動物に咬まれたときの応急措置

狂犬病リスクが高い地域に行く場合、事前のワクチン接種を。万一の場合は早急な応急措置と受診が最重要

狂犬病リスクが高い地域に行く場合、事前のワクチン接種を。万一の場合は早急な応急措置と受診が最重要

犬や犬以外の動物に咬まれた時、咬んだ動物が狂犬病を発症していなくてもウイルス感染の危険があります。最初にできる応急措置法として、傷口をすぐに洗うことが最重要。海外ではすぐに清潔な水で洗浄できる環境が整っているとは限りませんが、できればある程度衛生状態が管理された水道水か、生理食塩水で洗浄することをお薦めします。


狂犬病発症までの潜伏期間

狂犬病はひとたび発症すると致死率がほぼ100%なので、潜伏期間中に迅速に対応することが大切。ウイルスは血液経由ではなく、咬まれた箇所の末梢神経から中枢神経に向かってじわじわ広がり、脳に達してウイルスがある程度増殖した時点で発症します。そのため咬まれてすぐに狂犬病を発症することはなく、数週間~数ヶ月、長い場合には数年の潜伏期間があることになります。

咬まれた部位によって脳への到達期間が変わるので、手や足以上に、顔などの頭に近い場所を咬まれた場合が発症までの期間が短く危険とされています。

狂犬病の治療法

狂犬病は発症したら有効で確実な治療法はありません。治療法ではなく、「咬まれたときから発症するまで」の期間に発症しないように処置することが、唯一残された対処法となります。狂犬病がない日本では入手できませんが、「抗狂犬病ガンマブロブリン製剤」という薬も感染後の発症予防に有効とされており、海外の病院では扱われていることがあります。この製剤は発症後できるだけ早く投与すべきとされています。

その他、動物に咬まれた後のワクチン接種(暴露後ワクチン)の発症予防に有効とされています。ワクチン接種は、咬まれたその日のうちに初回のワクチン接種を受けるのが原則。日本に帰国してからではなく、滞在先の医療施設ですぐにワクチン接種を受けることが薦められています。

ワクチンは一度では十分な効果がないので、初回ワクチンに続いて複数回接種することが必要。日本国内では、ヒトに対しては副反応が弱いワクチンを接種していますが、一言で狂犬病ワクチンと言ってもその種類はさまざま。ワクチン接種を複数回行うときの原則は、同じワクチンを複数回接種することです。狂犬病ワクチンは海外から輸入していないので、外国で接種を受けた後に帰国した場合は日本で使用されている別のワクチンを接種する事になります。もし止むを得ない場合は、異なった狂犬病ワクチンの複数回接種でも有効とされています。

狂犬病ワクチンの予防接種

狂犬病には有効な治療法がなく、奇跡的に助かった症例を除くと死亡率はほぼ100%。人間の場合も狂犬病予防にはワクチンが有効です。狂犬病が蔓延している地域である程度滞在する予定がある場合は、あらかじめワクチン接種(暴露前ワクチン接種)を受けておくことが推奨されています。ただし、複数回接種で期間としては半年程度必要。予防のために暴露前ワクチン接種を受けている場合でも、万一咬まれた場合は再度暴露後ワクチン接種を打つ必要があります。

狂犬病ワクチンの副作用

狂犬病ワクチンは、現在感染性のない不活化ワクチンというものが使われています。しかし、不活化ワクチンといっても一種類ではなく、大きく分けて動物由来の成分を含む副作用が強いワクチンと、培養細胞を用いた副作用が弱いワクチンがあります。副作用の強いワクチンは最悪の場合、命に関わる脳炎を起こすリスクがあります。副作用が弱いワクチンを接種すべきですが、国によっては副作用が強いワクチンしか入手できない場合もあります。
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