感染症とは
誰でも感染症にかかる可能性があります |
感染症にかかると、体に侵入してきた微生物に対して免疫反応が起こります。免疫反応は炎症を引き起こすために、全身症状として発熱が起こり、局所的な症状としては、気道では咳や痰、消化管では嘔吐や下痢、皮膚では腫れや膿といった症状が起きることになります。
「感染」と「伝染」を区別することがあります。一個体(宿主)だと感染で、そこから別の個体(宿主)に感染した場合は伝染と表現する事があります。実際の場合は両者を区別出来ない事も多いので、伝染も含めて感染ということが多いようです。「流行」という表現は、感染が空間的に広がってしまった状態に用いています。
ヒトと微生物の好ましい関係って?
感染症のように好ましくない関係があれば、好ましい関係もあるはずです。地球上の生物は、海で微生物として発生したと考えられています。太古の海から現在の海まで海水中には大量の微生物が生きています。海水中の生物は体の表面が消化管を含めて海水に接しているので表面と消化管に相当する部分を微生物に覆われている状態です。海水中と比べて、空気中に浮遊している微生物は極わずかですが、陸に上がった生物の表面と外界と通じている消化管や気道は海の中と似た状態で、大量の微生物が生きています。これら微生物を部位ごとに皮膚の「常在菌叢(じょうざいきんそう)」、気道の粘膜の「常在菌叢」や消化管の「常在菌叢」と呼びます。
ヒトと常在菌叢の関係は一種の緊張関係です。特に消化管では、微生物の体内への侵入が絶えず試みられています。通常は侵入が起きないので感染症は起きません。免疫力が落ちてくると消化管の粘膜表面がカビで覆われたり、血液中への腸内の細菌の侵入による菌血症が起きます。
しかし、感染症を起こす事もある消化管の微生物からの贈り物が一つあります。ビタミンは食物から摂取しないと不足症が起きますが、例外的にビタミンKは消化管の細菌が産生するので、通常は不足症が起きません。ビタミンKを生み出してくれることはヒトと微生物の好ましい関係といえます。
伝染予防と人権
日本での感染症に関する法律は、所轄の官庁が複数あります。法律上の一番の問題点は縦割り行政のために人畜共通感染症について一元的に統制できていない点です。最近は鳥インフルエンザを契機として人畜共通感染症に対する法律的な対応が変わる兆しがあります。以下に主な法律を列挙します。厚生労働省管轄:
- 感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律[感染症法に基づく医師及び獣医師の届出について]
- 検疫法[検疫感染症]
- 予防接種法[予防接種対策に関する情報]
文部科学省管轄:
- 学校保健法(学校保健安全法)[学校における健康安全対策]
農林水産省:
感染症に関しての法律の一部には、伝染を予防するために個人の自由を制限する規定が設けられています。例えば、「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律」では、エボラ出血熱や結核などに関しては移動の自由を制限する条項があります。
罰則規定はありませんが、学校保健法が規程する学校伝染病では、例えばインフルエンザでは解熱後2日を経過するまで、風疹では発疹が消失するまでといった出席停止の期間の基準が設けられています。
風邪のように身近なものからコレラのように深刻なものまで、一言で感染症と言っても実に様々です。分かりやすく解説します。
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