糖尿病治療の薬とは?
薬の飲み忘れは意外に多いものです。いろいろ工夫をしましょう。 |
糖尿病患者の95%を占める2型糖尿病は、ゆっくりと進行する病気です。最初は食事と運動を守って減量すれば血糖値は下がりますが、進行すると、やがて「ヘモグロビンA1C」と言われる、過去2ヵ月の平均血糖値を表す数値が悪くなるときがきます。これが薬物療法のタイミングです。
ここまで読んで、「薬があるのなら、いざとなったら薬を飲めばいい」と簡単に考えていませんか? もし薬に頼る気持ちで、食事や運動をいい加減にしてしまったらどうなるでしょうか?
実は経口薬はそれ程効果のあるのものではないのです。普通、薬は病気を治すために服用しますが、糖尿病は完全に治すことが出来ないので、2型糖尿病の経口薬は血糖を下げるためだけに使います。
2~3種類を組み合わせても、せいぜいA1Cを1ポイント下げる程度です。適切な食事療法や運動療法の効果にはとても及びません。ですから薬を飲む前も、飲み始めてからも、食事や運動の良い習慣は守らなくては何にもなりません。
1型糖尿病は診断が下りた時からインスリン注射が欠かせません。かつては1型糖尿病のことをIDDM(インスリン依存型糖尿病)と言ったのはその意味です。2型糖尿病でも経口薬が効かなくなれば、インスリンを併用あるいはインスリン療法に切り換えますが、これでインスリン依存型糖尿病になったわけではありません。あくまでもインスリン治療を必要とする2型糖尿病です。
2型糖尿病の経口薬
2型糖尿病になると、高血糖になります。高血糖になる理由としては、- 自身のインスリン分泌能力を超えて食べ過ぎている
- インスリン分泌のタイミングが悪く、遅れて出てくる
- インスリンが十分な量分泌できない
- 筋肉細胞のインスリン感受性が低下していてブドウ糖を取り込めない
- 肝臓のインスリン感受性が低下していて絶えずブドウ糖を血液中に放出している
■ アルファーグルコシダーゼ阻害薬
食べすぎは是正するしかありませんが、デンプンなどの炭水化物の消化吸収を遅らせて、食後血糖の上昇を緩やかにするために使われます。タケダのベイスン(商品名)などで知られています。
■ スルホニル尿素(SU)薬
日本人は欧米人に比べてインスリン分泌能力が低いので、たいした肥満がなくても2型糖尿病になります。すい臓のベータ細胞に結合してインスリン分泌を促進させる薬です。
■ 速効型インスリン分泌促進薬
上記のスルホニル尿素薬の作用を速くした薬です。
■ ビグアナイド薬
太った人に多い肝臓からのブドウ糖放出(糖新生)を抑制する薬です。メトホルミンやブホルミンという一般名が知られています。
■ チアゾリジン薬
筋肉のインスリン抵抗性を改善する薬です。インスリンが分泌されているのに、その作用が十分でない患者に使われます。
日本では以上の5クラスの薬が使用されていますが、いずれはもう1クラス、DPP-4阻害薬という経口薬が増える予定です。
インスリン製剤の種類
インスリンは作用が現われる時間の速さや、その作用が持続する時間によって分けられます。■ 超速効型インスリン・速効型インスリン
食事のときの体のインスリン分泌を真似るために使用します。
■ 持効型溶解インスリン
体は食事と無関係に常に一定量のインスリンを必要としています。それに併せて、持続時間を長くしたタイプです。
■ 中間型インスリン
目的に応じて、効く早さと持続時間を調整したものです。
■ 混合型インスリン
(超)速効型と中間型とあらかじめ一定の比率で混合して、作用の早さを調整したものです。
これらを経口薬と併用したり、生活パターンにあわせるなどして、インスリン療法が行われます。インスリン注射はとても簡易でほとんど無痛ですから導入を遅らせないようにしましょう。
薬物療法の人は、自分が使っている薬がどのクラスのものかをしっかり理解してください。