うつ病/うつ病の原因・症状・セルフチェック

うつ病が招くからだの病気

うつ病になると、体の生理機能に悪い影響が現れ、いろいろな病気のリスクが高まります。

中嶋 泰憲

執筆者:中嶋 泰憲

医師 / メンタルヘルスガイド

うつのサインは見逃さないで!うつ病は体の生理機能に影響を与え、いろいろな病気のリスクを高めます
うつのサインは見逃さないで!うつ病は体の生理機能に影響を与え、いろいろな病気のリスクを高めます
気分が落ち込むと、何をするにも億劫で、今まで楽しかった事も楽しめない。睡眠も浅くなり、熟睡感が得られず、食欲も今ひとつ。このように、うつ病は生活の質を低下させますが、うつ病の影響は精神面のみにとどまりません。身体面にも悪影響があります。今回はうつ病が如何に体の生理機能に影響を与え、他の病気になるリスクを高めるか、お話したいと思います。


うつで起こる体の生理機能の変化

うつ病の原因は脳にあるのですが (脳内の神経伝達物質の一つであるセロトニンが深く関与しています)、 このセロトニンやうつ病時に増加しやすいストレスホルモン (ストレスに直面した際に体内で分泌されるホルモン) の生理作用によって以下のような事が起こりえます。
  • 高血圧
  • 高コレステロール
  • 心臓の拍動リズムの変化
  • 血液凝固系の異常 (血液がドロドロしやすい)
  • 免疫機能 (体を細菌やウイルスなどの外敵から守る働き) の低下
  • 高血糖
     
また、うつになったときに見られがちな生活習慣の変化には以下のようなものがあり、上記の生理的な問題をより大きくしやすいです。
  • 喫煙の増加
  • 飲酒の増量
  • 栄養の偏り (高カロリー、高脂肪の食品に偏りやすい)
  • 運動不足
次に、うつ病になるとリスクが高くなる病気について述べます。

うつ病になるとリスクが高くなる病気
虚血性心疾患、脳梗塞、糖尿病、ガン(?)

虚血性心疾患(狭心症、心筋梗塞)は心臓へ栄養を送る冠動脈が詰まってしまうのが原因です。うつ病時に起こる生理的変化として、血中のコレステロール値が上昇すると血液はドロドロになりますし、また、高血圧や高血糖を合併すると動脈硬化 (血管壁の弾力性の低下) が進みやすくなり、血管がより詰まりやすくなります。冠動脈の狭窄の程度が軽い場合は胸部に痛み (狭心症) が起き、重い場合は、発作(心筋梗塞)が起こります。脳の血管が詰まると脳梗塞が起こります。

うつになると分泌されやすいストレスホルモンにはインスリン (膵臓から分泌されるホルモン) の作用を弱くする働きがあります。インスリンの主な役目は血糖値を下げることなので、インスリンの作用が抑制されると、高血糖になりやすくなり、糖尿病のリスクが高まります。

ガンのリスクに関しては、現時点では、うつ病はリスクらしいという段階で、実際に、どの程度、危険なのかは定かではありませんが、うつ病になるとガンのリスクが高まるという研究報告は幾つかあります。その根拠としては、うつ病時に免疫機能が低下して、体内のガン細胞を見つけて退治しにくくなる事や、うつ病にありがちな生活習慣 (運動不足、高脂質の食事、喫煙の増加など) が、挙げられています。

このように、うつになるといろいろ悪いことが起きやすくなりますが、うつ病は決して、稀な疾患ではなく、誰でもかかってしまう可能性があります。早期発見、早期退治が大切なのは言うまでもありません。うつ病のサインは是非、見逃さないようにしたいです。
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