「冬季うつ病」とは……季節と関連して出るうつ症状
日照時間が短くなる秋から冬のみ、うつ症状が出る「冬季うつ病」。冬季の日照量不足が最大の原因と考えられています
うつ病の中でも最も季節性と深く関わっているものが「冬季うつ病」です。特徴と症状についてわかりやすく解説します。
<目次>
冬季うつ病の特徴……20~30代の女性に多い病気
冬季うつ病の最大の特徴は、その名の通りうつ症状が冬季に限定されて生じる点。日が短くなる秋から冬にかけてうつ傾向が強まり、春になると自然とうつ状態から回復して元気になるという季節性があり、20~30代の女性に多い病気です。冬は木々が葉を落として動物たちも冬篭りに入るなど生命が休眠する季節ですが、人間も日射量不足に強く影響され、気分や活動力が顕著に低迷してしまうことがあるのです。
冬季うつ病の症状
冬季うつ病の症状は、一般的なうつ病の症状とほぼ同一。具体的には- 気分の落ち込み
- 今まで楽しんできたことを楽しめない
- ぐったりとして疲れやすい
- 活動量の低下
- 眠気が強く、睡眠時間が長くなる
- 食欲の亢進、特に甘いものが欲しくなる
冬季うつ病の原因は日照時間の短さ
冬季うつ病の原因は、日射量不足とはっきりわかっています。特に冬季の日照時間が顕著に短いフィンランド、スウェーデン、アラスカなどの地域では、冬季うつ病の発症率が人口の10%近くか、それ以上になっています。また、初めからそれらの地域に住んでいる人よりも、それまで太陽光に恵まれた地域で暮らしてきた人が移ってきた場合の方が、よりリスクがある、言葉を変えれば、より警戒したい病気です。日光とセロトニンの関係……セロトニン不足によるうつ症状
日射量不足によって、脳内にどのような変化が起こりうつ病になるのかははっきり解明されていませんが、日光とセロトニンの関係である程度説明可能です。セロトニンは「脳内神経伝達物質」と呼ばれる脳内の神経間の情報伝達を担当する物質のひとつ。セロトニン不足はうつ病の直接的な原因と考えられています。一方で、メラトニンは覚醒と睡眠の時間が交互にやってくる生体リズムを作る基礎になる物質で、夜間の睡眠中に脳内分泌量が最大になり、昼間の太陽光で脳内分泌量が抑制されることがわかっています。
つまり、セロトニン不足はうつ症状を促し、本来就寝時のメラトニンが起床時にも多いままだと活動的な気持ちにスイッチが入らないということにもなります。
ここで話を日光とうつ症状の関係に戻しますと、目に入った日光が網膜を刺激することで脳に信号が送られて脳内でのセロトニン作用が増強し、生体リズムに関連深いホルモンであるメラトニン産生が抑制されます。これによって気分が快適になることが、日光が気分を良くする大まかな仕組みだと言えば、分かりやすいかもしれません。
それで、多くの人がどんより曇った日よりも晴れ渡った日を快適と感じるように、日光自体にも人の気分をよくする作用があります。冬季うつ病の場合は日照時間が短いためにセロトニン作用が弱いままで、起きていてもメラトニン抑制がしっかりとされず、うつ状態になってしまうという見方もあります。
なお冬季に限って気持ちが落ちこむ場合でも、冬季だけ職場の環境が大きく変わる場合や、例えば年末年始の帰省ストレスを非常に強く感じる人など、気候とは別に落ち込みの原因がはっきりしている場合は、うつ病自体には変わりなくとも、ここまで述べてきた冬季うつ病とは違うことには、ご注意ください。
治療法、改善法について詳しく知りたい方は、「冬季うつ病の治療法・改善法」をご覧ください。関連する情報として、「冬眠と同じ? 睡眠障害から見る冬季うつ病の特徴」「ちょっとした工夫で幸せ物質「セロトニン」を増やす5つの方法」などでも、詳しく解説しています。
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