内膜症手術を行うケース
手術を行うかどうかも含め、主治医とよく相談を……
- 妊娠を望んでいて大きな卵巣のう腫や子宮腺筋症がある場合
- 薬物治療で症状が改善しない場合
- チョコレートのう腫が大きい、または、どんどん大きくなっている場合
- 40歳以上で4cm以上のチョコレートのう腫がある場合
- 腫瘍マーカーが高く、悪性腫瘍を否定しきれない場合
先日手術をした30代の方は、大きなチョコレートのう腫があり不妊治療中でもあるので、妊娠率を上げるために手術に踏み切られました。また、ずっとチョコレートのう腫を経過観察していた40代の方で、突然腫瘍マーカーが上がり始めたため慌てて手術をしたら「卵巣癌」になっていたというケースもあります。
子宮内膜症の手術方法の種類
閉経までまだ期間があって卵巣が腫れていない場合は、子宮のみを切除します。卵巣に子宮内膜症ができる「チョコレートのう腫」が一緒にある場合は、腫れている側、または腫れがひどい側の卵巣を一緒に切除し、片方の卵巣はできるだけ残すようにします。両方の卵巣が大きく腫れていたり、閉経まであと2~3年という場合は両側の卵巣を一緒に切除することもあります。内膜症を根本的に治すためには、子宮全体、あるいは子宮と卵巣を全て取ってしまう「根治術」を行うことになります。症状がひどく薬物治療も効かない場合の最終的な治療法ですが、基本的に今後妊娠を望んでいない人にしか行わない手術です。根治手術は開腹手術で行われるため、10日前後の入院が必要になります。
不妊症を改善するための手術
妊娠を希望している人で子宮腺筋症があり、症状がひどい場合や不妊症の場合、妊娠できる状態を保ちつつ内膜症の病変を切り取る必要があります。こういったケースに対して行うのが、子宮の壁の中で腺筋症の部分だけを削り取る「腺筋症核出術(せんきんしょうかくしゅつじゅつ)」。開腹手術で行います。妊娠を希望していて、チョコレートのう腫がある場合は、開腹手術ではなく腹腔鏡手術で卵巣のう腫を摘出することがほとんど。ただし、チョコレートのう腫が両側にあって極端に大きい場合や、癒着が強くて腹腔鏡手術ができない場合は、開腹手術をせざるを得ないこともあります。内膜症の病変があることをそのものが不妊の原因になるので、妊娠を希望している場合は腹腔鏡手術でチョコレートのう腫の中身を吸い出したり、お腹の中を洗ったりするだけでも妊娠率の改善につながります。
のう腫が癌化する危険性も
卵巣にできた内膜症である「チョコレートのう腫」が大きい場合や、40歳以上で4cm以上のチョコレートのう腫を長期間経過観察している場合は、途中でチョコレートのう腫が悪性化し、癌になってしまうことがあります。ずっと様子を見ていたチョコレートのう腫がいきなり大きくなってきたり、腫瘍マーカーが上がってきたりしたら要注意。悪性化が疑わしい場合は、時間をおかず早めに手術で卵巣を取り除いた方が安全です。また、40歳以上で大きなチョコレートのう腫がある方は、悪性化してしまう前に手術しておくことをお勧めします。チョコレートのう腫も10cmを越えると破裂のリスクが高くなってきます。のう腫が破裂すると、非常に強い腹痛が出現したり、下腹全体に炎症や癒着が起きてしまうことがあるので、サイズが大きすぎる場合も早めに手術を検討した方がいいでしょう。
手術の必要性や適切な術式も人によって異なってきますので、どの段階でどういった治療を行った方がいいのか、その都度よく相談してみてくださいね。