結核に似た症状が出たら、誰でも不安になるものです。少し専門的な内容も含まれますが、結核が疑われた場合の検査法について解説します。
結核が疑われた場合の検査法
簡単に免疫反応を調べることができるツベルクリン。10mm以上の発赤が出たら陽性
- 画像診断・顕微鏡検査→当日判明
- 喀痰の遺伝子検査・血液検査(施設内で実施している場合のみ)→翌日判明
- ツベルクリン反応→接種48時間後判明
- 液体培地→培養開始、数週間後判明
- 小川培地→培養開始、4週間から8週間後判明
昔はまず喀痰検査し、4週間以降に「小川培地」という検査法で陽性結果が出た場合に結核と判断していました。しかしそれでは時間がかかり過ぎるので、今は小川培地より短時間で培養できる「液体培地」や結核に対する免疫記憶を調べる「血液検査」などを使って、より早い段階でより正確な結核の診断ができるようになっています。検査の内容や順序は病院の規模や設備によって異なりますが、いずれかの検査で結核が疑われた段階で、専門病院に回される場合が多いです。
画像診断・顕微鏡検査
画像診断はいわゆるレントゲン検査のこと。レントゲン写真だけでなく、胸部のCTスキャンも有効です。咳があって喀痰が取れる場合は、取った喀痰を染色して顕微鏡で観察し、結核菌と結核の仲間の菌の有無を確認することもできます。ただし、顕微鏡で菌を確認 できても結核菌なのか、結核菌の仲間の菌なのかの区別はできません。また、喀痰中の菌量が少ないと実際は感染していても感染者とみなされない「偽陰性」となってし まいます。
喀痰の遺伝子検査
喀痰による顕微鏡検査の結果が陰性でも陽性でも、遺伝子検査を実施することもあります。検査結果は喀痰を採取してから早くても翌日以降。これによって、より結核診断の精度を高めることができます。
ツベルクリン反応
「ツベルクリン反応」は結核に対する免疫反応を調べる検査。以前は学校で児童に対して行われていましたが、現在は結核が疑われる場合や、結核患者に接触してしまった人に対して行います。液を皮下に接種し、48時間後に接種部位に出ている発赤が直径10mm以下なら結核の心配はありません。10mm以上の発赤が出ていた場合は、結核が疑われます。
乳児期にBCGの予防接種が行われている日本では、その影響で陽性反応が出ることがあるため、陽性でもすぐには問題にはならず、他の検査が行われます。しかしBCGを実施していないアメリカでは、ツベルクリン反応の陽性は結核に感染していると判断されます。ツベルクリン反応が陽性だとアメリカへの留学や海外赴任の時に問題になり、結核を発症していなくても抗結核剤の内服を薦められる場合があります。
ツベルクリン陽性の場合は血液検査
BCG接種をしていてツベルクリン反応が陽性の場合は、BCGのせいで陽性になったのか、結核菌のせいで陽性になったのかを判別しなければなりません。これは最近実施されるようになった血液検査で区別できます。より専門的な血液検査を行うことで、結核菌に対して免疫記憶を保持しているかどうかを確認することができます。ただし、この血液検査は、結核菌を吸い込んでから直ぐには陽性とはなりません。結核菌を吸い込んでから数ヶ月しないと陽性とはなりません。液体培地
検体を専用の液体培地に入れて培養すると結核菌や結核菌の仲間の菌がいれば数週間で陽性となります。陽性となった場合は遺伝子検査で結核菌かどうか判断します。小川培地
昔から使われている結核菌用の培地が小川培地です。培養時間に4週間以上必要です。まれに小川培地だけ陽性の場合があるのと薬の効き目を確認する感受性用検査のための菌を入手するのに必要な培地です。結核菌の遺伝子検査
遺伝子検査を行えば、喀痰などの検体中に結核菌や結核菌の仲間の遺伝子があるかどうかを検査することができます。喀痰の場合、顕微鏡で菌が見えなくても陽性である場合があります。結核の遺伝子検査が上に述べたように検査が数日で判明するのは、喀痰から直接遺伝子検査をして陽性となった場合です。液体培地で陽性となった場合も遺伝子検査を実施して、結核菌がどうかを判断します。
診断確定は最速で受診翌日
結核に関する検査をすべて実施している医療機関は少ないのが現状です。各種検査を実施している医療検査を受診して、喀痰検査を実施して、顕微鏡で菌が確認できて、遺伝子検査の結果が翌日判明した場合は最速で受診翌日に診断が確定することになります。結核の診断は総合判断
上記のように、結核の診断は、CTスキャンなどの画像診断、BCGの既往、ツベルクリン反応、培養検査(微生物学的検査)、遺伝子検査、集団感染が疑われた場合は血液検査を総合して行います。検査結果が判明するまでの時間は数日から数週間かかってしまうのが現状です。