ものもらいについて、はじめに
眼科治療に行ってもなかなか治らないことがある「ものもらい」。まずはものもらいがどんなものか理解を
「ものもらい」という言葉は正式ではありません。私のふるさとの京都市内では「めいぼ」、大阪の友人は「めばちこ」と言っていました。これらの言葉はすべて、「まぶたが腫れあがった状態」をさしているものと推定されます。
私も昔はずっとこの言葉を使っていましたが、「ものもらい」「めいぼ」「めばちこ」は正式な医学用語ではないので、人によって指すものが違う可能性があります。ここでは正確を期するために、あえて「推定されます」という言葉を使います。
私は昔からものもらいの治療に真面目に取り組んできたこともあり、これまで非常に多くのものもらいの患者さん、それもほとんどが他院で治らず困っている患者さんを診察してきました。今でも毎日10~20人のものもらいの患者さんの治療を行っています。ここではそれらの治療の中で、自分なりにわかってきたことを書いてみたいと思います。
私は臨床の実地体験から得られた事実が一番正確だと考えていますし、自分の考えに自信を持っていますが、これから書くことには一般の眼科の教科書に書かれていることと多少違う部分があります。それゆえ一般の眼科医の知識と多少違うところがあります。なので、眼科に行って「All Aboutにこう書いてあったが……」というと、先生にあまり良い顔をされないかもしれませんので、ご注意ください。
ものもらいの正式な病名
繰り返しになりますが、ものもらいとは、まぶたが腫れた状態をさすと考えられます。正確な病名で言うと、次の3つを指すものだと考えられます。- 霰粒腫(さんりゅうしゅ)……まぶたに油がたまった状態
- 化膿性霰粒腫(かのうせいさんりゅうしゅ)……まぶたに油がたまって、同時に中で感染を起こしている状態
- 麦粒腫(ばくりゅうしゅ)……まぶたに菌が感染して膿がたまった状態
ここが教科書、すなわち日本眼科学会が提唱する定義と私の考えの最大の違いなのですが、元来「ものもらい」という言葉自体がとてもあいまいなものなので、人によって指しているものも違うでしょうし、どちらがあっているか間違っているかは検証のしようもないので、私の考えは教科書の考え方を否定するものではありません。上記の種類を踏まえた上で、それぞれの特徴や治療法について理解を深めていただければと思います。
「ものもらい」は重要度が低い病気?
なぜ私がものもらいを眼科の教科書に載せるように動かないかというと、実は医学の現場ではものもらいが非常に軽く扱われているという現状があります。患者さんにとっては自分の外見が変わってしまい、なかなか治らないと非常に負担に感じる病気ですが、ものもらい自体は失明するようなリスクの高い病気でもなく、ほとんどが自然治癒するもの。ものもらいについての学会発表を行っても現場での注目はあまり高くありません
。これは他にもっと重度な病気を治して行くという仕事が山ほどあるので、残念ながら当然のことでもあります。このような経緯で、ものもらいに関する正式な教科書は作成できてはないのですが、この場を借りて、ものもらいで困り果てている患者さんに直接私の考えを伝えられればと思います。