栄養バランスだけでなく、「しつけ」の要素も盛り込む
南 特に新村さんがこだわった「おべんとう丸くん」の特性を教えていただけますか?新村 まずこのおかず用の上段が二層式にしてクルクルと回せば、側面に食べる順番を示したイラストが現れます。順序よく、楽しく食べながら、同じおかずばかりを繰り返し食べる「ばっかり食べ」を防ぐようにと考えました。
それに加えて、私が子どもの頃初めて中華料理店でターンテーブルをみた時、心弾んで楽しかった、あのワクワクする感覚をお弁当箱にも盛り込んでみたかったんです。
下段ごはん用は、持つて食べやすいごはん茶碗の形になっています。 |
新村 それも考慮しています。「健康のためにバランスよく食べる」だけではなく食育が目的ですからしつけの面も考えなければなりません。ですから、支柱の部分をわざと少し細かく角度をつけて早く回らないようになっています。空ですとよく回りますが、おかずが入ればその重みで、速くは回りません。
南 平らでなく少しギサギザをつけることで摩擦がおこり、速く回らないようになっていると。とてもきめ細かい配慮がされているんですね。この主菜、副菜、果物の間仕切りも、はずしやすく洗うのも楽そうです。
それから子どもは、普通のお弁当箱だと重くて持ち上げにくいのですが、このごはん茶碗なら軽くて持ち上げられるので、よい食べ方の習慣がつきやすいと思います。
大切なことは「意識づけ」
おかずの用の仕分けは、何をどれだけ食べればよいかを示す食事バランスを示すイラストでわかりやすく示されています。 |
間仕切りの比率は、理想的な「主食3:主菜1:副菜2」を目安としています。私はこの「おべんとう丸くん」を使えば、食事バランスや食事のしつけがすぐに「解決」できるというのではなく、これを使うことで「意識づける」ということをサポートできたらいいなと思うのです。
南 現代は健康に関する情報が多く、関心の高い方も多いのですが、情報がありすぎて何を食べてよいかわからない人もいますし、まったく関心のない人もいたり。何をどれだけ食べたらよいか不安な人には、よいサポートになるんですね。
また最近は塾通いで、子どもたちが自分でコンビニでお弁当を買って食べるというケースも多いそうです。例えば幼稚園や小学校時代に、このお弁当箱を使って、ごはん3:主菜1:副菜2の比率が、カラダに刻まれていたら、自分で選ぶ時にもハンバーグや唐揚げばかりのお弁当ではなく、野菜もたくさん入ったお弁当を選ぶことにつながっていくかもしれませんね。
親が常にそばにいてしつけできる時間は、現代ではなかなかつくりにくいのが現実ですから、そういう意味で、この「おべんとう丸くん」が求められる理由がわかった気がします。
子どもだけでなくお父さん用にも
新村 「意識づけ」は作る側にもいえることで、例えば少しおかず入れに空きスペースがある時に、唐揚げをもう一つ入れるのか?、野菜を一つ入れるのか? この間仕切りを見て、野菜を多くいれた方がいいんだと意識してもらうことが大切だと思います。初めは子どもを対象にしていましたので、容量も小さく幼稚園の子が食べるくらいの量にしていたのですが、案外大人の方、女性の方や、それからお父さんのメタボリックシンドロームが気になるのでと、買われる主婦の方も多いんです。
南 中高年の男性に、1日の食生活を聞きますと、朝と夜はとても栄養バランスがよいのに、お昼はカツ丼、ざるそばだけ、というように、単品メニューが多いんです。朝夜は奥さんが作るからですが、自分では何をどれだけ食べたらよいか判断できないんでしょう。それで、お父さんのための食育、意識づけのために、大人用が欲しいということですね。人任せでなく、自分で「今日は野菜が足りない」と判断できることは、大切なことだと思います。