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ジェネリック医薬品の現状と今後(2ページ目)

最近医療機関でも徐々にジェネリック医薬品が処方されるようになってきました。しかし、まだまだ課題もあります。ジェネリックの普及に関して懸念点を含めて今後の動向を考えてみました。

三上 彰貴子

執筆者:三上 彰貴子

薬剤師 / 薬ガイド

ジェネリック医薬品の懸念点

患者さん、病院、薬局の間では、ジェネリック医薬品について、主に以下のような懸念点があるようです。

■ 患者さんの心配
最近の宣伝で存在は知っているけれども、どういうものか良く分からない。医師にジェネリックを希望しても、まだ特許が切れていない先発品のみの薬だったり、医師の治療方針から先発薬が処方される場合があります。さらに、医師にジェネリック薬をお願いするのは、なんとなく悪い気がして言い出せない……ということもあるようです。

■ 病院の心配
ジェネリックは有効成分は同じでも、その含有量や、含まれる他の成分が違うことがあります。そのため、品質や均質の面で先発薬と効果や副作用の差を心配している場合があります。

その他、製薬会社の営業(MR:医薬情報担当者)が多く、雑誌やネットでたくさんの情報が手に入る先発品に比べて、ジェネリックの情報は入りにくい。また、流通の面でも扱っている業者がまだ限定されていて、急に必要になった場合に対応してくれるかも心配に。さらに、ジェネリック医薬品会社は、規模の小さい会社が多いので、販売中止や会社の倒産で安定供給できなくなるのではなど懸念しているようです。

■ 薬局の心配
病院同様の品質の心配の他、在庫や価格面での問題もあります。どんな処方せんが来るか分からないジェネリック医薬品の全てを揃えることは不可能で、処方せんを受け取ってから必要に応じて調べて取り寄せたり、どのジェネリックにしたかを医師にFAXなどで知らせたり(医療機関側もファイリングしたり)など、非常に労力がかかる割に経営面ではほとんどメリットがないようです。

以上のように、まだ普及しはじめた段階ですので、患者さんも病院も薬局も、まだまだ心配な点があるのです。逆に言うと、これらの懸念点がしっかり解決されれば、他の国のように、日本でもジェネリック医薬品が普及していく可能性があります。


2007年は実る? ジェネリック普及に向けての努力!

メリットとデメリットを併せ持つ日本のジェネリック市場。しかし現在、この課題に取り組むべく、ジェネリック医薬品メーカーや協会、医療従事者等が、積極的に努力をしています。

例えば、品質や名前、価格等のデータがすぐに分かるような書籍やサイトもできてきました。また、医療従事者側も、ジェネリックの使用データを蓄積して研究会や学会などで発表したり、地域の医師会や薬剤師会で情報を共有し始めています。

その他、流通面でもジェネリックを扱う卸が増えたり、小分け包装や地域でジェネリックの備蓄センターを作ったり、薬局同士で在庫の融通をしあったりする努力がされています。さらに患者さんに対しても、分かりやすいポスターや説明文書、セミナーなども開催され始めているのです。

それに、ジェネリック医薬品は、成分の研究開発に莫大な費用がかからない分、メーカーはさらなる製剤の工夫に資金を投入できます。そのため、錠剤を小さくしたり、少ない量で吸収するように工夫したり、防腐剤なしでも1ヶ月もつような滅菌フィルターがついている目薬などといった、価格以外での違うメリットがある薬剤も登場。今後さらに期待できそうです。

現状のジェネリック医薬品市場は、そのメリットと安心を、確実に送り届けるためのデータや流通ネットワーク作りの段階でしょう。今後は、ジェネリックの立ち位置が日本でも明確になり、政策上のメリットも併せて、一般にももっと認知されてさらに普及していくのではないでしょうか。

ジェネリック医薬品に興味のある方は、一度、医師、薬剤師にご相談してみてくださいね。


【参考リンク先】
ジェネリック医薬品市場調査>富士経済
お薬の基礎知識part18 ジェネリック医薬品>All About記事
ジェネリック医薬品で安くなる?>All About記事 
ジェネリック製品の弱点>All About記事
お薬の基本的な飲み方>All About記事
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