【市販の解熱剤の効果は弱い】
市販の総合感冒薬の成分表をみると、たいていアセトアミノフェンという成分が含まれています。アセトアミノフェンは、小児科領域でもある程度安心して投与できる解熱剤です。小児用のバッファリンの主成分もアセトアミノフェンです。
しかしアセトアミノフェンの解熱作用は弱いので、実際は解熱というより、例えば38.5度ならそれ以上の発熱が起きない程度しか効果はありません。ですから、明らかな解熱効果を得るためには、医者で強い解熱剤を処方してもらうしかありません。
【強い解熱剤を断ると患者離れ】
解熱剤は、病気を長びかせ、ひきつけ(熱性痙攣)の予防効果もなく、場合により脳症の重症化とも関係しています。それを理解しても、保育園に子供を取りあえず預けたい共働き親は解熱剤を使いたいと考えます。
一般に保育園では、一定以上の発熱した子供を預かってくれません。ところが特に保育園に預け始めのころは、親は子供の発熱の嵐の洗礼を受けることになります。子供の発熱の度にどちらかが欠勤ということになります。欠勤後に、子供を保育園に預けるためには、その時点で子供が平熱でなくてはいけません。そこで開業医の先生に強い解熱剤の処方を頼むことになるのです。
ところが、解熱剤の多くは体内で直ぐに分解されるので、効果が持続することはありません。数時間で効果はなくなり、また発熱します。解熱剤を使って、平熱でその日の朝に保育園に子供を預けても、昼ごろには発熱して、保育園から勤め先に連絡が入り、『子供が発熱したので、早退します』と周囲の了承を得た上で保育園に早めにお迎えに行くことになります。なかには、以前に医師に処方された解熱剤を家庭に取り置きして使う人もいます。
勤め先の欠勤と早退の扱いが異なることが多いので、この社会的な解熱剤の使用はなかなかなくならないのが現状です。また、共働きの親から強い解熱剤を要求された場合に解熱剤の処方を断ることは、患者離れにつながる可能性があって開業医では難しい選択です。
【強い解熱剤より職場の理解】
小児への強い解熱剤の投与をしないためには、職場の理解が必要という結論になります。共働きをしていない人に、共働きの人の子育て、特に保育園での苦労を理解してもらう必要があるのではないでしょうか。
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