癌(がん)/がん治療費・保険

がん保険の契約前に……診断書をチェック!(2ページ目)

民間企業のがん保険に加入する際に診断書が必要なことがあります。こうした書類作成に医師も一苦労しますが、中高年以降では「既往歴」について問題となることがあります。ぜひ注意したい点をまとめました。

執筆者:吉國 友和

死亡原因はガン? 合併症?

診断書
診断書の形式は様々です。特筆すべきことは遠慮なく医師に伝えましょう
人間の死は、脳死をもって死亡、あるいは心臓の停止(心停止)を死と定義するなど、各国・個人の考え方によっても違いがあります。一般的には呼吸が止まり、心臓が止まった時点で死亡宣告が行われます。

9月10日の記事(ガン治療にかかる費用)の中で、ガン保険に加入することも検討を、と記載しました。そのガン保険についての注意点があります。例えばある人が肺ガンにかかり最期を迎えたとします。ところが、後になって死亡診断書を見ると、直接の死因は肺ガンに合併した「肺炎」と記載されることがあります。肺ガンに限らず様々な病気をきっかけに、肺や心臓などの合併症を起こして死に至ることがあるためです。

脳死を死と定義するかどうかという問題は別として、どんな病気であるにしても人間が死に至る場合、心臓の機能が低下(心不全)するか、呼吸ができなくなるか(呼吸不全)のどちらかです。そのまま「心不全・呼吸不全」と最終診断名を記載せざるを得ないこともあるのですが、死亡診断書には「末期状態としての心不全・呼吸不全という診断名は避けること」という記載があります。このため、肺ガンに肺炎を併発したときのように、死亡時の診断名は医師によっても見解が異なることがあります。

A医師 「肺炎は起きたけれど肺ガンの一連の合併症であったのだから、直接の死因は肺ガンだ」

B医師 「肺ガンが重大な影響を与えたのは間違いないけれど、死因はガンによって免疫力が低下したために起きた肺炎だ」


どちらが正しいのかは、その時の状況によって判断せざるを得ません。死後、究極の検査方法である解剖を行ったとしても、両者が混在する場合にはいずれか一方を死因として断定できないことも現実には多々あるのです。診断の限界の一端ではないでしょうか。


ガン保険の契約前に!

上述のように、同じ状態であっても最終診断名が医師の見解によっては異なることもあります。だからといって、死亡病名がガンであってもその合併症であっても、その後の埋葬を含めた対応の仕方に区別があるというわけではありません。しかし、民間企業が運営するガン保険によっては、最終診断名が「ガン」でなければ満額給付されないという話を聞いたこともあります。ですが、診断書を作成した後にご遺族から「死因を合併症ではなく、ガンにしてください」と言われても、医師が保険のために診断を変更することはできないのです。

こうしたトラブルを避けるためには、合併症あるいは他の疾患で亡くなった場合の給付を受けることができるのかを、保険契約を行う前に確認しておくことをお勧めします。また、ガン保険に加入していることを主治医に伝えておくことは禁止されていません。特に治療にかかる医療費も賄われるタイプの保険では、治療を開始する前の段階、確定診断された時点で主治医に(ガン保険の)診断書作成を依頼することを伝えておくとよいかもしれません。


診断書に記載される内容に虚偽があってはなりませんので、作成に当たる医師は慎重に吟味します。これは民間の医療保険を請求する際にも同じことが言えます。後になって、「持病はなかったことにしてください」という患者さんも何人かいらっしゃいましたが、そうすることはできないのです。医療保険に加入する際にはくれぐれも慎重に……。

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