感染症/感染症のしくみ・感染経路・予防法・治療法

風邪を予防する正しいマスクの使い方(2ページ目)

風邪の予防にマスクは有効ですが、正しく使わなければ効果も低下してしまいます。昨年の正しい手洗いの方法に続き、正しいマスクの着用法をご紹介します。

執筆者:吉國 友和

ウイルス補修率から見たマスクの種類

マスク
風邪の予防にはマスク、特徴と使用法もしっかり抑えておきましょう
顕微鏡でかろうじて確認できる「細菌」に対して、「ウイルス」ははるかに小さいものです。この小ささゆえに大半のウイルスは普通の紙やガーゼでできたマスクを簡単に通り抜けてしまい、こうしたマスクでは感染予防効果が劣る可能性があります。代表的なマスクをウイルスの捕集効率が高い順番に並べると、次のようなものがあります。

  1. N95マスク……ウイルスを95%以上カットすることができる。ウイルスよりも大きな細菌はほとんど阻止できるので、結核病棟などで医療従事者が結核に感染するのを予防するためにも使用されている。
  2. サージカルマスク……ウイルス補修率はN95には及ばないものの、経済的で通常の細菌感染の対策につながるので、外科手術時などにも使用されている。
  3. その他の市販マスク……通常のガーゼや使い捨ての紙を用いたマスク。飛散しているウイルスを吸い込んでしまう可能性があるが、唾液のような水分中に含まれるウイルスをカットする効果は期待できる。

N95マスクのような、風邪の原因となるほとんどのウイルスをカットするマスクもすでに商品化されています。従来の紙でできたマスクでは、空気感染する病原体は通過してしまうことが多いのですが、何もしない状態と比べると飛沫感染(咳やくしゃみ)の予防には効果的です。ただ、どんなに優れたマスクでも、着用方法を誤ってしまっては効果が落ちてしまいます。


正しいマスクの着用法

飛沫感染・空気感染ともに、主に鼻や口の粘膜から病原体は感染します。一般的な風邪の場合には感染した人からのくしゃみや咳による飛沫感染が主ですが、インフルエンザウイルスは飛沫感染だけでなく、床や地面に一度落下した病原体が空気の流れによって再び舞い上がって空気感染を起こす危険性もあります。特に換気の悪い部屋の中には比較的長時間ウイルスが舞い続けるということもありますので、単純に顔の前からマスクをして鼻や口を覆うだけでは、マスクの隙間からウイルスが入り込んでしまうことも十分に考えられます。

少しでもマスクの予防効果を高めるためには、隙間のないように着用することです。特に、マスクを顎(あご)のあたりまですっぽりと覆うように意識してみてください。人間の鼻の穴は下を向いていますから、地面から舞い上がったウイルスをできるだけ直接吸い込まないためです。単純なことのようですが、本来の感染予防策とは、この「ちょっとしたこと」の積み重ねが大切なのです。また、外出時に使用したマスクには、ウイルスが付着している恐れもありますので、家の中に入る前にゴミ箱に捨てるようにしましょう。同様に、室内に入る前には衣服をスプレー式の消毒薬で消毒するのが理想です。


風邪やインフルエンザなどの感染症を100%予防することは、現実的には不可能です。しかし、同じように手洗いやマスクをするのであっても、より適切に用いることで少しでも予防効果を高めることが大切です。しかも、風邪で病院を受診したときの医療費や不要な支出を抑えることも期待できますから、宝くじで一等を当てるよりもはるかに高い確率で、家計にとってプラスになります。また、日本独特の風邪の予防法である水道水によるうがいや部屋の加湿もお忘れなく!

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