コレステロールと目と腎臓の合併症
血糖値を正常値に近づければ合併症になりにくいと誰でも考えますね。でも、これを科学的に証明するのは大変な仕事だったのです。DCCT(糖尿病コントロールと合併症トライアル)という、アメリカで1型糖尿病の人達を対象として行った研究で見事にそれを実証したのはまだ記憶に新しいところですが、あの発表は1993年でしたから、もう14年も前のことになりました。
1型糖尿病と診断されたばかりの1,400人余りの人達に1983年から1989年までDCCTに参加してもらいましたが、DCCTが終った後も参加者に随時年1回てもらうEDICという研究がその後10年間引き続きました。
このEDICで採血された血液がいろいろなテーマをもった研究者たちに毎日のように提供されたのです。なにしろDCCTの被験者の90%がEDICにも参加したのですから。
その中に糖尿病網膜症や腎症のような細小血管合併症とコレステロールの関係を調べているRichard L. Klein PhDのチームがありました。サウス・カロライナ医大の准教授(当時)のDr. Kleinは核磁気共鳴装置(NMR)を用いてサンプルのリポプロテイン(VLDL,IDL,LDL,HDL)のサイズを計測しました。サンプルの人の合併症はブラインドしてあります。
その結果は小さくて重い悪玉(LDL)コレステロールはとても血管を損傷しやすく、善玉(HDL)コレステロールは大きいほど役に立つことが分かりました。LDLのようなリポプロテインには大・中・小のサイズがあったのです。つまり、大きいサイズのLDL(悪玉)、大きいサイズのHDL(善玉)を持っている人は動脈硬化になりにくいのです。男性で血糖コントロールが悪い人は、コレステロールの状態が動脈硬化を起こしやすいサイズになることも発表されています。重度の網膜症は中性脂肪値に相関する(1型男性)という論文もあります。
>>次のページでは、超悪玉コレステロールと対策法をご紹介します。>>