高齢者のどの位の人が糖尿病?
平成14年の糖尿病実態調査(厚生労働省)によると60歳以上の男性の実に3人に1人は糖尿病、あるいは糖尿病の可能性を否定できない人です。女性は4人に1人強です。男性も女性も60歳以上で増加しています。アメリカでも既に1,700万人が糖尿病と診断されていますが、その半分以上が60歳を超えた人達です。
アメリカン・ネイティブのピマ族は遺伝的に特別に糖尿病になりやすいため、65歳以上では4人のうち3人が糖尿病者、ヒスパニック系でも3人に1人が糖尿病者です。
高齢者の糖尿病は何が違うの?
2型糖尿病者は『老人病』の典型でしたから、間違いなく年齢と共に変化する病気です。加齢に従ってインスリンを分泌するベータ細胞(すい臓)の能力が低下してきます。
さらに筋肉量が減少して内臓脂肪が増える"からだ"になりますから。インスリンの作用も低下(インスリン抵抗性)します。
加えて、高齢者特有の諸条件があります。
- 2型糖尿病になりやすくなるリスクの改善が年と共に難しくなります。たとえば減量、食生活の向上、タバコ、運動不足などもどんどん困難になります。
- 高齢者は多病です。糖尿病の合併症と関係が深い『高血圧』だって治療は容易ではありません。投薬も増えますから、薬の干渉、副作用の害が出てきます。
- 高齢者の合併症は速く進行します。自覚がないがままに糖尿病の診断が遅れますので、かなり年齢が経た糖尿病が多いのです。さらに身体的にも若い世代に比べて重い合併症が増えてきます。
- からだも不自由、脳の認知力も低下してくるので、生活全般にわたって糖尿病治療を守るのが困難になってきます。
- 介護の不足、経済困窮によって通院や薬の使用に不備が生じます。
高齢糖尿病者の対処法は?
糖尿病の治療は患者のQOL(Quality Of Life:生活の質の向上)の向上と合併症にならないようにすることですから、若者も高齢者も違いはありません。しかし、高齢者はきわめて多様な流儀で生きてきた人たちですから、一人ひとりに合った治療目標が必要です。
平均余命が10年を切った人に無理強いすることもありませんし、自立できない人に理想的な血糖コントロールを求めても不可能です。
意志や、やる気の有無も個人的なものです。
糖尿病は完治しない病気ですから、いつまでも根気よくつき合っていく相棒です。
『恐れず、油断せず』でまいりましょう。
結び
アメリカで行われたDPP『糖尿病予防プログラム』で、5%の減量と1日30分の運動が2型糖尿病の予防・遅延に効果があることが分かりましたが、トライアルに参加した3,234人の内、20%の人が60歳以上でした。年齢に関係なく、ローファット、ローカロリー食と適度の運動は糖尿病のリスクを下げてくれるようです。
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