睡眠障害が代謝を狂わせる?
シカゴ大学の研究者たちが、いびきや睡眠時無呼吸が体の代謝にどのような影響を与えるか調べた結果が、2008年1月のはじめに発表されました。20歳~31歳の若い健康なボランティア9人(男5人・女4人)の熟睡を、目覚めない程度の騒音をスピーカーから流して妨害してみたのです。これは大きな「いびき」や睡眠時無呼吸の代替です。
一晩の睡眠サイクルは目が活発に動く浅い眠りのレム睡眠(20分間)と、深い眠りのノンレム睡眠(70分間)が何回も繰り返されて、朝の爽やかな目覚めにつながります。夢を見るレム睡眠は脳が覚醒に近い状態で、体は眠っています。ノンレム睡眠は深い眠りで、脳が休んで体は動いています。
ノンレム睡眠は脳波から浅い眠りの「stage 1」から、最も深い徐波睡眠の「stage 4」まで4段階に区分されます。シカゴ大学の実験では、被験者が「stage 3~4」の徐波睡眠に入ると騒音を流して、「stage 2」の浅い睡眠に戻すようにしました。
翌朝目覚めた被験者に前夜の体験を尋ねますと、4~5回何か聞こえたという人から10~15回という人までいましたが、実際には250~300回も流していたそうです。日を追うごとに深睡眠不足のために騒音で刺激する回数が増えました。
このため被験者たちの徐波睡眠(深い眠り)の合計時間は60歳代のレベルまで減少しました。一般には若い成人は一晩で80~100分間の徐波睡眠があるのに対し、60歳代では20分以下なのだそうです。
毎朝インスリン感受性を調べたところ25%も低下していることが分かりました。健常者なのにインスリン分泌が対応できず、血糖値が23%も上昇していたのです。数値としては耐糖能障害、つまり糖尿病予備軍のレベルです。驚くべきストレスですね。
疫学的な研究では睡眠不足は肥満につながることが証明されています。アメリカで行われた16年間の大規模な「ナースの健康スタディ」では、1日5時間以下の睡眠の女性は7時間/日に人に比べて32%も肥満(体重にして15kg)でした。いろいろな理由があるでしょうが、食欲を調節するホルモンが睡眠に影響されることが考えられます。
睡眠不足は満腹感をもたらすレプチンの濃度を下げて、食欲を刺激するグレリンを高めてしまいます。つまり睡眠不足は過食になりがちなのです。寝不足は免疫力も弱めますから、血糖を安定させて体重をもう少し減らしたい人は、まずは7~8時間の快眠を心掛けるようにしましょう。
関連リンク
from 睡眠時無呼吸症候群 Update - Dr Banno
from All About[睡眠・快眠]