女性は男性よりアルコール依存症を発症しやすい?
アルコールは良い面、悪い面がある諸刃の剣です。
良い面としては、社会生活を送る上での潤滑油となり、恋人同士でロマンチックな時間を過ごすこともできます。また、少量の飲酒は心血管系に良いなど健康上の効能もあります。
アルコールの悪い面は、急性中毒、依存症、飲酒運転、暴力行為など様々な問題があることです。こうした問題には誤解されやすい点もいくつかあります。例えば、「アルコール依存症は心の病気」だという意識があまり無い方もいらっしゃるものです。
アルコール依存症は男性に多いとは言え、女性にも起こります。今回は、アルコールの問題として、特に「キッチンドリンカー」と呼ばれる、女性の飲酒問題について述べたいと思います。
<目次>
女性・主婦がキッチンドリンカーになってしまう原因
アルコールに対する強さには性差があります。それには同量のアルコールを飲んでも、体内の血液量が少ない人は血中アルコール濃度がより高くなることも関わります。女性は男性より平均的に体格が小柄で、脂肪の割合が多いので、体内血液量は少なく、アルコールの作用がより強くなる傾向が出るのです。また、女性ホルモンは肝臓でのアルコールの分解をある程度阻害することも、女性は男性に比べてアルコールに弱い要因です。
こうした体質的な原因もあれば、一旦、ふだんの飲酒が行過ぎてしまうと、一般に女性は男性よりも早く依存症を発症しやすいです。これに加え、妊娠中の飲酒は胎児の成長に悪影響を与えるといった問題にも大きな注意が必要です。
それで、長期間にわたり飲酒を続けると、飲酒の量、回数などに応じて、心理的にも身体的にもアルコールに対する依存が生じます。アルコールへの依存が深刻になった状態とは、飲酒へのコントロールが効かなくなり、以下のような問題の幾つかが、はっきり現われている状態です。
- 飲酒後に罪悪感や自己嫌悪を覚える
- 最初の一杯で終わりのつもりが、とことん飲んでしまう
- 飲酒中やその直後の記憶がない
- 朝から飲んでしまう
- 飲酒が原因で暴力行為と呼べるような問題が起きている
- 家庭や仕事で深刻な問題が生じている
- 周りの人から飲酒を控えるように忠告されている
キッチンドリンカー治療のゴールは断酒
キッチンドリンカーはアルコール依存症の一つのタイプです。もともとは、主婦がキッチンで食事の準備中に食用酒を味見しているうちに、飲酒のコントロールが困難になり、家族が気付いた時にはアルコールに対する依存が進んでしまうことを指す語として、アメリカで生まれた言葉です。日本においても同じように、社会的に認知されている語だと思います。
妻がキッチンドリンカーになる背景には、さまざまな原因の不満や葛藤が心に生じていることが挙げられます。
例えば、仕事をバリバリやっていた過去と家庭に入ってからのギャップへの戸惑い、周囲との人間関係がうまくいかない、子育てが終わり時間を持て余してしまう、夫との関係が冷えてしまったなど、自分では解決しがたいと感じたとき、飲酒が気分を晴らす手段になってしまう可能性があります。
キッチンドリンカーの治療法……ゴールは「断酒」
アルコール依存症のみならず、一般的に依存症の治療は、胃潰瘍などの多くの身体疾患の治療とは異なります。体の悪い所を治療で治すという形ではなく、それなしで毎日をしっかり送れる、新しい自分へチェンジしていくプロセスです。アルコール依存症の場合は、アルコールなしで毎日をしっかり送れる自分にチェンジしていくことが、治療を受けていく成果であり、そのゴールは断酒です。依存症は一般に自分や家族だけで解決しがたい問題です。それゆえ、薬物療法、心理療法、アルコールアノニマス、断酒会などの自助グループへの参加などを通じて、そのゴールへ向かって行くことになります。
家族の絆が問題飲酒対策の基礎です!
断酒というゴールへ到達する事は実はなかなか容易でないものです。依存症に対しては予防はたいへん重要です。
妻がキッチンドリンカーになるのを防ぐためにはアルコールを求める元にある妻の心に生じている不安や葛藤を理解し、家族全体で解決を探る事が重要なカギであり、以下のような対策も考えてみてください。
- 妻の不満に耳を傾ける
- 一緒に過ごす時間を多くするようにする
- 睡眠、食欲など妻の変調を見逃さない
- 家族での会話を増やす
- アルコール依存への知識を高める
家族のメンタルヘルスの基盤であるお互いを気遣う気持ち、相手への感謝や尊敬の気持ちはどうでしょうか? もしも、妻が普段何をしているか良く知らないといった状況なら、夫の気付かない間に妻が心の病気になっていたという事は起き得ることです。
心の健康にとても重要な家族の絆。ご家庭ごとに習慣は異なりますが、お帰りのキスの習慣があるだけでも、妻の飲酒には気付けるかもしれません。言うまでもないこととは思いますが、家庭内のコミュニケーション、スキンシップは、くれぐれも大切にして行きたいものです。
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