アルコール

アルコール依存症の治療は、飲酒量を減らすことではありません。「完全な断酒」が治療のゴールなのです

アルコールに対する欲求、依存が強く、自分では飲酒コントロールがきかなくなるアルコール依存症。性格の弱さや不健康なライフスタイルが原因と思われがちですが、実際は、脳内の神経科学的変化や、脳の変化を悪い方向に拍車をかける心理的、環境的要因などが原因。アルコール依存症から回復するためには正しい治療が不可欠です。

アルコール依存症の具体的な治療法について詳しく解説します。

治療ゴールは「断酒を維持できること」

アルコール依存症のゴールは、アルコールに2度と近づかなくなること。誤解されやすいのですが、飲酒に対するコントロールを取り戻し、上手にアルコールと付き合えるようになることがゴールではありません。

一度アルコール依存症になると、長期間にわたる過剰飲酒で脳内に神経科学的変化が生じ、脳へのアルコール作用が刻みこまれてしまいます。少量でもアルコールが体内に入った時点で、あたかもスイッチが入ってしまったように飲酒コントロールを失いやすくなるのです。そのため適度にお酒を嗜むことはゴールにできず、2度とアルコールを体内に入れないという徹底した目標を置かなければなりません。

アルコール依存症の治療は、アルコールに2度と近づかないというゴールを目指し、以下のように入院療法、外来通院療法の2種類で行なわれます。

入院療法によるアルコール依存症治療

アルコール依存症では、まず断酒をした時、つまり体にアルコールが入ってこなくなった時点で生じる「退薬症状」に対処しなければなりません。長期間にわたる過剰飲酒が続くと、脳がアルコールによって過剰に抑制された状態になります。アルコールが急激に体から抜けてしまうと、脳の活動を抑えつけていたものがなくなってしまい、痙攣など生命に危険な症状が起こる可能性もあるからです。

退薬症状の医学的なコントロールはもちろん、すでにアルコールによる全身状態が悪化している場合や自殺リスクがある場合などは、本人の状態を24時間確認して対処すべき必要も。そのため、一般的なアルコール依存症治療の最初のステップは入院療法となるのです。

入院期間は依存状態の深刻さによります。入院中には、感染症や臓器の機能低下などの身体的な合併症状への対処を併せて行い、心身ともに安定した時点で退院。それ以後は外来通院で治療を進めます。

外来通院療法によるアルコール依存症治療

外来通院中は断酒を維持していくために、心理療法(精神療法)と、必要に応じて薬物療法が行なわれます。

心理療法では、アルコール依存症に対する理解を深めることで2度とアルコールを体内に入れないためのモチベーションを高め、同時にアルコールに頼りたくなるような心の葛藤や苦悩に対処するために、生活環境からのストレス解消力を向上させます。

薬物療法の治療薬としては、まず、断酒へのモチベーションを高めるための抗酒薬があります。抗酒薬はアルコール代謝を阻害し、代謝の中間物質であるアセトアルデヒトドの血中濃度を高めます。アセトアルデヒドは二日酔いの原因物質なので、これを服用しておくことでアルコールが体に入ったときにひどい二日酔い様の症状が出現するようになり、断酒が促されます。

アルコール依存症に心の問題が合併している場合も、薬物療法を行います。例えば不眠に対しては睡眠薬、気持ちの激しい落ち込みに対しては抗うつ薬、強いイライラに対しては精神安定剤など。精神的な症状も適切にケアし、アルコールに手を出したくなる心的状態に陥ることを防ぎます。

家族、友人のサポート、自助グループへの参加

アルコール依存症の治療ゴールである「2度とアルコールを体内に入れない状態」をキープする上で必要なのは、最終的には本人のモチベーション。しかしモチベーションを維持する上で励ましになるのは、何といっても家族や友人など周囲からのサポート、交流です。

しかし現実には、アルコール依存症に関わる問題行動で家族や友人から距離を置かれて孤立している患者さんが多いことも事実。治療と併せて人間関係を再構築していくことも、アルコール依存症治療の大きなチャレンジの1つですが、こうした困難に立ち向かう上で、仲間がいる方が心強いものです。同じ目標に向かっている仲間の存在を知り、知識を共有するためにも、アルコールの場合は『AA(アルコホーリクス・アノニマス)』などの自助グループを主治医に紹介してもらい、自発的に参加することが望ましいです。

以上のように、一旦アルコール依存症になってしまうと、回復までには多くの時間と労力が必要になります。依存症になる前の段階でストップをかけるためにも、アルコール依存症に関する知識なしにお酒を習慣化することは控えたいものです。もし身近な人がアルコールに関する問題を抱えていると感じたら、ぜひ早めに精神科で相談することをを勧めて下さい。
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