肩こり/首こり・首の痛み・肩の痛み

電車の居眠りで首を痛めない眠り方

仕事で忙しい方は、通勤電車での居眠りはちょっとした幸せな時間でしょう。でもそんな居眠りから目覚めた後、首や肩につっぱり感や痛みを感じることはありませんか? もともと首が不調の人はこういった痛みに見舞われやすいものです。首や肩の痛みの引き金となり得る眠り方、上手な眠り方のコツを解説します。

檜垣 暁子

執筆者:檜垣 暁子

カイロプラクティック理学士 / 肩こり・腰痛ガイド

寝不足を補うはずの居眠りで、身体に不調が……

電車内の居眠り

電車の居眠りで首や肩周りを痛める方は多いようです

電車やバスで椅子に座ると、いつの間にかうとうと……。仕事や勉強で忙しい毎日、電車やバスの移動時間に座れると、ほっと一息つけるという方も少なくないでしょう。睡眠不足を補うのに少し居眠りをしてしまうこともあると思います。しかし、心地良い眠りから目が覚めて、首を動かそうとすると、なぜか首が動かない……。これは寝違え? 意外と多くの人に経験があるのでないでしょうか。

居眠りの姿勢が悪かったのか、いつも姿勢が悪いから仕方ないのか、自分の姿勢を省みる人も多いようです。貴重な睡眠時間、寝覚めの不調は避けたいですね。座り姿勢の居眠りから目覚めた後、首や肩の痛みの引き金となってしまう4つのケースをご紹介しましょう。
 

背骨のS字カーブは立ち姿勢向け……座ると姿勢は崩れやすい

通勤電車で席が空いていると、ちょっと得した気分になるかもしれませんが、中には座ったことで首や腰が痛くなってしまう人も。ヒトの背骨はもともと自然なS字カーブを描いています。まずはこのS字カーブについてご説明しましょう。

本来あるS字カーブは、立った姿勢で身体への負担が少ない状態。つまりこのカーブが維持できると、筋肉や内臓もしっかり機能します。しかし、座ることで背骨の乗っている骨盤の傾斜が変化し、腰部への負荷が増加する恐れがあるのです。その影響は、背骨の一部である頚部にまで及ぶことも。結果的にS字カーブの配列が崩れると、首の筋肉や関節に大きな負担となってしまいます。
 

居眠りで首を痛める4つのパターン

首の不調
慢性的な肩こりのある人、背中が張りやすい人は、居眠り姿勢も要注意です
電車やバスで目覚めたときの首や肩の痛みはどのような時に起こるのでしょうか? 実はほんの些細なことが引き金になることも……。下記のような経験をしたことがある人は要注意。では、4つの例を挙げてみましょう。

1. 背中は伸びて比較的良い姿勢で座っているが、「頭部が下がりうつむいている」。目が覚めると、首の後ろ側から肩にかけて張った感じが残る。

2. 「背中の中央付近からうなだれるように頭が下がっている」。目が覚めて身体を起こすが、背中から首スジが重く感じ、正面を向くと首にも違和感がある。

3. 目が覚めると隣の人に寄りかかるほど、首を横にかしげ身体も斜めに傾いている。「慌てて身体を起こそうと首を正面へ戻した」ときに、首スジがズキッと痛む。

4. 相当疲れていたのか「天井方向を見上げ口を開いて眠っている」ことにふと気づく。気づいたときには、既に首が痛い。一度正面に向き直したが、気づくとまた上を向いて寝ていた。首の痛みよりも眠気が勝っているようだ。

次に、首や肩甲骨、背中へのストレスについて、上記の1~4をもとに詳しく説明しましょう。
 

頭の重さ、首の関節……居眠りが原因の身体へのストレス

■頭の重さによるストレス
多く見られる「うつむき姿勢の居眠り」は、首や背中の筋肉にストレスをかけることになります。特に、20分以上うつむいたまま動かずに熟睡した場合は、頚部を支える組織に問題が起き、回復までに40分以上かかると考えられます。まずは前に挙げた「1」「2」の例について考えてみましょう。

1. 「頭部が下がりうつむいている」
頭の位置はとても重要です。成人で約5kgもある頭ですが、これを支えるのは首になります。うつむき姿勢になることで、頭の重さで首の後側筋肉が伸張され負荷がかかります。身体よりも頭の位置が前方にある場合は、負担増の危険性アリです。

2. 「背中の中央付近からうなだれるように頭が下がっている」
頭部の重さによる負担はその1と同様ですが、その2では背中の中央あたりからうなだれる姿勢になります。すると、違和感の範囲が首だけにとどまらない場合があります。腰が弱い人は腰の症状も感じるかもしれません。

■首の関節へのストレス
居眠りで首の痛みや肩こりを悪化させないためには、まずはご自身のコンディションを知りましょう。普段から天井方向を見ると、首の後ろに詰まり感や痛みがある人は、頚椎の関節に大きな負担がかかっている可能性があります。「3」のように「急激に頭を動かす」、「4」のように「顔を天井方向へ向ける」居眠りはとても危険です。

3. 「慌てて身体を起こそうと首を正面へ戻した」
傾いた体を起こし首を正面に戻そうと、ふいに首を動かしたときにぎっくり腰ならぬ「ぎっくり首」が……。急激に首を動かすと、首を痛めてしまうケースがあります。

4. 「天井方向を見上げ口を開いて眠っている」
首の不調を感じつつも、天井を見上げて眠ってしまう。この姿勢は首の関節に負担をかけてしまい、もともと肩こりのある人にとっては、悪化させる要因の一つになりかねません。中には気持ち悪くなってしまう場合もあり、そのような場合には早期の医療機関受診をおすすめします。

最後に、電車でできる首にやさしい目覚め方をご紹介しましょう。
 

電車での居眠りで試したい首を痛めない目覚め方

うつむき姿勢で目が覚めた時は、勢い良く頭を持ち上げないように気を付けましょう。特に、首の調子が元々悪い人は、簡単に首を痛めてしまう可能性がありますので要注意。ゆっくりと下記のように頭を上げていきましょう。
 
  1. (うつむき姿勢で目が覚めた場合)首の後面が伸ばされています
  2. うつむいたまま、両肩をゆっくりすくめてみましょう
  3. 両肩をすくめたまま、頭をゆっくり起こしていってください。そこで、首周辺に痛みを感じなければ、5秒間両肩をすくめてキープ
  4. ゆっくり肩の力を抜いてリラックスさせる

なお、背中の中央からうなだれ寝の場合は、頭は下にむけたままで、まずは身体を起こし背スジを整えます。

電車で居眠りをしていて、ふと気づくと、自分が降りる駅でドアが開いている! こんな時は一瞬で眠気も飛び、ガバッと起きて走って電車を降りると思います。こうした緊急時に、首だけではなく腰まで痛めて電車から降りられなくなってしまった方の例もあります。くれぐれもご注意ください。

■参考
運動機能障害症候群のマネジメント 著Shirley A. Sahrmann(医歯薬出版株式会社) 
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