1)の「排卵誘発剤による1回の排卵卵胞数の増加」の場合は超音波診断により、卵胞数はわかるので多胎を防ぐには卵胞数が一個の時だけ排卵誘発をするという工夫が行なわれます。しかし、年齢が高い場合、一個の卵子では今まで妊娠しない方の場合、確率をあげるために複数個の卵胞があっても排卵を行ないます。これが時々、多胎に結びつく訳です。
しかし、以前に比べて顕著な多胎はかなり減ってきているのは事実です。これも様々な医療側サイドの工夫とドクターと患者さんの相談がきちんと行なわれており、「その危険性と可能性のどちらを取るのか」という選択が明確になってきたためと考えております。
2)の「生殖補助技術(ART)である体外受精や顕微授精時に子宮に戻す卵子を複数戻すため」の場合は1)の場合より問題は深刻です。なぜなら排卵誘発などをすべてやってARTに来られている重症例が多いので戻す受精卵が一個というのがうまく妊娠に結びつく可能性が低いからです。よって今は胚盤胞移植の一個戻しというのが注目をあびています。それは胚盤胞までいく受精卵は質のよいものなので着床する率も高いとされているからです。
しかし、どんな方法でやっても1個で妊娠しない場合や高齢で急がなければならないときには確率をあげるために2個もしくは3個戻される場合もあるわけです。そしてしばしば多胎が起きてくる訳です。
よってドクターは「妊娠率を1%でも多くあげて、患者さんに喜んで頂きたい」と思う気持ちと「多胎を起こすと患者さんの身体的負担が大きくなるので避けたい」という矛盾する気持ちの中で治療を行っているのです。
まとめ
よって一番多胎が起きないのは自然妊娠に近い状態で妊娠することであり、まずはそこを目指すべきです。治療されている方も多胎を防ぐには出来るだけそのリスクを回避してもらえるようにドクターと話し合う必要があります。特にARTの場合、2~3個戻すのはそのようなリスクがあることを知っておかなければいけないということになります。
このように「妊娠する」というのは常に様々なリスクが伴うということで女性は特に大変だなと思います。男性陣はその事もよく知ったうえで奥様を気遣われる事が大事だと思います。
多胎の具体的な防止策については多くのドクターが様々な試みをされていますので、別の機会に詳細をご紹介してまいります。
多胎育児サポートネットワーク
26回 厚生科学審議会生殖補助医療部会議事次第「多胎・減数手術について」