診断法:血管の中を知るのは難しい!
生存者の証言では胸痛が主な症状ですが、解離性大動脈瘤は、解離が進行するまでは無症状です。心筋梗塞のように狭心症の状態もありません。死亡率が高い原因の一つは、前もっての症状がないことだとも言えます。前記事で説明しましたが、解離が起きた場合に胸痛があると、心筋梗塞によるショック症状との鑑別が必要になります。心臓から血栓が脳に飛んでしまった場合は、脳梗塞と誤診される事もしばしばあります。
血管中で起きている事を知るには画像診断が必要です。血管造影やMRIが有効ですが、大きな病院でなければ、たとえ装置があっても、夜間は扱う人間がいないという実情があるので、検査は実施できません。
心臓超音波も有効ですが、大動脈は大部分が体の奥を流れているので、有効性は限定されてしまいます。
手術の方法:水を止めずに水道管を交換?
たまにテレビのニュースなどで、水道管から水が溢れている映像を見ることがありますね。勢い良く吹き上げる水の映像と、水浸しの景色はイメージがつきやすいと思います。「解離性大動脈瘤」もまさにこの水道の本管にあたります。一つ違うのは、水道の場合は修復工事の時に水を止めることができる点です。水道が止まった地区には給水車が生活必要水を配りに行きます。しかし、動脈の場合はそうはいきません。
大動脈が解離してしまった部位で、手術の方法は当然異なりますが、水道を止めずに水道管の入れ替え工事をするのと似た状態となります。それにどう対策をしても、脳は通常は数分以上の虚血には耐えられないのです。
手術中に人工的に体温を下げる事によって、この虚血の時間を延長することはできます。それでも虚血1回の時間を数分から数分数十分にするのがやっとです。
大量に血液が必要な手術になるので、病院の在庫では足りず、血液銀行に何度も血液を注文する事になります。時に一つの血液銀行では足りず、地域全体から血液を集めることになります。最終的には1つの都道府県の全部の血液を使いそうな勢いになることがあります。解離性大動脈瘤の手術は、非常に大がかりなのです。
何よりも予防が大切! その方法とは?
固い大動脈ではなくて、柔らか大動脈を維持しましょう。 |
少し大げさな言い方ですが、大動脈がガチガチになることで、「バリン」と割れて、そこから解離が始まるのですから、柔らかい動脈を維持していれば、大丈夫なのです。
予防で効果的なのは運動。運動中は血圧は上昇しますが、長期的には血圧を下げる効果があります。運動中に大動脈が膨らむので大動脈硬化の進行も抑制します。
また、大動脈硬化の危険因子は、遺伝因子(内因)では性別の男性、環境因子(外因)でいうと喫煙と高血圧です。喫煙習慣のある男性は、まず禁煙から始めましょう。
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