心臓・血管・血液の病気/大動脈の病気・大動脈瘤・大動脈解離

加藤茶さんを襲った解離性大動脈瘤とは(2ページ目)

加藤茶さんがかかり、無事手術にした「解離性大動脈瘤」。実は手術が成功することは珍しいほどの、大変な病気だったのです。今回はこの病気のメカニズムについて、ご説明します。

西園寺 克

執筆者:西園寺 克

医師 / 感染症・健康情報ガイド

解離が起きた場所で変わる! 深刻な症状

aorta
大動脈はJを逆さにした形です。
解離が進行すると、出血によるショック症状、血栓や梗塞など、あらゆる循環障害が始まります。

前ページで説明した通り、動脈の外膜は薄いので、大動脈から高い圧力で出血が始まります。水道管に例えると本管から水(血液)が吹き出すイメージです。大動脈が解離した位置によって、出血に伴って起きる症状が変わります。

たとえば「心嚢」という心臓を包んでいるものの中で解離が起こって、血液が心嚢に漏れだすと、漏れた血液が心嚢内にたまって、外から心臓を圧迫してしまいます。これは「心臓タンポナーデ」という心臓が動かない状態を生みます。これは心筋梗塞で起きる心破裂と同じで、即死の状態です。特に胸痛がなくて心臓タンポナーデが起こった場合は、解剖で心嚢をあけて、初めて死因が判明することもあります。

また、「心嚢を出た後」の大動脈で解離が起こった場合、出血性のショックとなります。

一方、解離した部分では血小板が活性化して体内で止血が始まります。次に凝固系も活性化しますので、結果的に大動脈内で血栓ができてしまいます。解離部分にできた血栓が血流で飛ぶ状態となり、血栓は大動脈から流れて行って、全身の血管が詰まってしまいます。血管が詰まる(血栓による塞栓症になる)と、血管が詰まった部位に応じた症状となります。例えば脳で塞栓症を起こせば脳梗塞となります。

このように、解離性大動脈瘤は、非常に恐ろしい病気の一つなのです。


一難去ってまた一難!術後の「ショック肺」

また、以上のショック状態から奇跡的に回復して、意識が戻ったとします。次に恐いのがショック肺です。肺への血液が減った時に受けた障害で、肺が傷ついてしまっていた場合、呼吸不全で死亡してしまうことがあります。肺自体が損傷しているので、この場合は酸素を送ってもガス交換ができません。このショック肺も非常に死亡率が高い病態です。

加藤茶さんは今回、手術に成功しましたが、非常に幸運なことだったと思います。それでは、この恐ろしい病気を予防する方法はないのでしょうか? 予防法については、次回記事でご紹介します。
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