必要以上の酸素は有害となる可能性
人間は酸素を吸って、二酸化炭素を吐き出します |
II 型呼吸不全であった場合、低酸素だからといって酸素マスクで高濃度の酸素を吸ってしまうと、かえって呼吸状態が悪化してしまいます。体内の二酸化炭素が急上昇すると、最終的には意識も朦朧となって呼吸中枢が麻痺してしまい、呼吸ができなくなるからです。側弯症が高度な場合には、日常的に血液中の二酸化炭素が高くなっていることもあります。特に、睡眠中には呼吸の回数が減ることで低酸素状態が顕著となるなど、睡眠時無呼吸症候群に似通った症状を呈する可能性も考えられます。
睡眠時無呼吸症候群の治療を応用
ところで、睡眠時無呼吸症候群の治療には、CPAP(シーパップ)療法と呼ばれる、呼吸を補助する機械が利用されます。国内でもずいぶん普及してきましたので、読者の方の中にもこの治療をされている方は多いと思います。この機械の仕組みを端的に表現すると、睡眠中に機械からホースを通したマスクを鼻にあてがって、息を吸うときも吐くときも、機械から強制的に鼻へ空気を送り込むことで、いびきの原因となっている気道の狭窄・閉塞を解除するものです(正確には、圧力をかけることで気道閉塞を解除する仕組みです)。前述のように、血液中の酸素が低くかつ二酸化炭素が高い状態に対する治療は、この機械の仕組みを応用します。その方法とは、息を吸うときには機械が強力に空気を送り込み、吐くときには圧を低くして息を吐きやすくするものです。換気を促して、二酸化炭素を排出しやすくすることができます。わかりにくい方は、汚れた水たまりを想像してください。大量のきれいな水を注いでは、汚れた水をくみ出す、繰り返しているうちに水たまりは、限りなくきれいな水へと変化します。
もっとも、体内では呼吸をしている限り絶えず二酸化炭素が発生しますので、完全に二酸化炭素が除去されるわけではなく、正常のレベルにまで近づくといったところです。睡眠時無呼吸症候群に用いられる機械を応用したものとはいえ、実践するのはかなり難しい治療ですので、実施できる医療機関はある程度限られてしまいますが、上手く使うこなすことができれば「命を縮める」という事態を避けることができるかもしれません。
この治療法は、脊椎疾患の合併症だけでなく、タバコが原因のCOPD(慢性閉塞性肺疾患)をはじめとする、多くの慢性呼吸器疾患でも用いられています。50代から増える呼吸器疾患、あなたもひょっとして……?