脳に「脳細胞」は存在しない
脳は使えば使うほど発達を続けます。でも、その反対も……? |
例えば、記憶力には脳の中でも海馬(かいば:ヒポカンパス)と呼ばれる部分が大きく関わっていますが、加齢現象に伴い海馬のグリア細胞の数が減少すると、新しく物事を記憶する力(記銘力:きめいりょく)が低下するのは避けがたいことです。ですが、グリア細胞はそれぞれが連絡を取るためのネットワークを張り巡らせ、このネットワークを介して細胞同士が連絡を取り合っています。
少しでもグリア細胞が生き続ける限りこのネットワークは発達し続け、優れた思考力へとつながりますので、脳にとっての「老化防止」とはいかにネットワークを密に巡らせるかということに他なりません。このネットワークは脳に刺激を与えることで発達し続けます。
「脳に刺激」とはどういうこと?
グリア細胞が新しくネットワークを広げるのは、その必然性のためとも言えます。必要がなければわざわざ膨大なエネルギーを利用して、新しいネットワークを形成することもありません。例えば「明日、晴れたら、部下を連れて、ゴルフに出かける」という予定を立てたとします。それぞれの単語である、明日、晴れ、部下、ゴルフ、という言葉はそれぞれ御馴染みの単語ですが、それぞれを結ぶと1つの文として意味を持つようになります。端的な表現ですが、これは「明日」という意味を知る細胞、「晴れ」という意味を知る細胞、それぞれすでに認知されている単語を知る細胞同士が連携をし合うことで、脳が統括してその意味を解釈しているのです。それまでまったく知らなかった意味を解釈したり、言葉を結び付けたりするには、新しくネットワークを形成しなければなりません。このように細胞同士が連絡を取り合う必要が生まれることで、脳が自ずと働きを示すことが、いわゆる脳を刺激するということです。
ところで、「明日」なのか「明後日」なのか、勘違いしてしまうことがあります。ですが、これは同じ「時間」という概念の範囲に含まれる単語の中での問題ですから、間違いというよりも年齢に関わらず誰にでもあり得るただのミスなのです。決して老化のためと落ち込まないようにしてください(もちろん、明日の予定を3ヶ月後と大きく間違えてしまうと問題になることがありますが)。
こうしたことを踏まえて、いかにして脳の機能を発達させるかと考えてみましょう。
次のページでは脳の老化を阻止する具体策をご紹介します。