脳・神経の病気

頭蓋咽頭腫の症状・診断・治療

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)は良性の脳腫瘍の一つで、下垂体柄という場所に発生します。小児に多くみられます。治療は経過観察、開頭手術、内視鏡手術、放射線治療です。予後は比較的良好な疾患ですが、治療後にホルモン補充が必要な可能性があります。

井上 義治

執筆者:井上 義治

形成外科医 / 皮膚・爪・髪の病気ガイド

頭蓋咽頭腫とは

頭蓋咽頭腫(ずがいいんとうしゅ)は、脳腫瘍の一種でトルコ鞍(あん)の上部にある下垂体柄(かすいたいへい)という部位に発生する良性腫瘍です。

下垂体柄

頭蓋咽頭腫は下垂体柄と呼ばれトルコ鞍の上部に発生します。


発生する部位のすぐ近くに、視交差という左右の視神経が一緒になる場所があるため視野の欠損が症状となることがあります。

頭蓋咽頭腫の年齢、性差

脳腫瘍のなかでは多い疾患で、胎生期の頭蓋咽頭管の遺残から発生します。15歳以下の小児に好発します。

頭蓋咽頭腫の症状

初発症状としては水頭症があります。頭蓋咽頭腫が脳脊髄液が流れるモンロー孔を閉塞し、水頭症となります。頭痛、嘔吐などの症状がでます。進行すると視野の欠損も発生します。

さらに進行すると下垂体を圧迫し、各種ホルモンの低下症状が発生します。低身長、毛髪が薄くなる、基礎代謝の低下などの症状が出現します。

頭蓋咽頭腫の診断

■MRI
脳腫瘍の診断にはMRIが必要です。

MRI

脳MRI画像。下垂体柄に発生した頭蓋咽頭腫。


■病理
最終的な診断は、切除した腫瘍組織の病理診断(顕微鏡診断)で決定します。

病理

     頭蓋咽頭腫では良性の腫瘍細胞が認められます。


頭蓋咽頭腫の治療法

■経過観察
症状がない場合頭蓋咽頭腫は治療の対象となりません。そのため年1、2回のMRI撮影を行います。

■手術
なんらかの症状のある頭蓋咽頭腫では、増大すると生命予後に関わるため手術を検討します。

■開頭術
腫瘍の局在部位、大きさなどから開頭手術が必要な場合があります。

開頭手術

   全身麻酔下に開頭手術が必要な場合があります。


■内視鏡手術
小さな腫瘍であれば、内視鏡により頭蓋咽頭腫を切除し、完全に腫瘍細胞を取り除くことができれば治癒となります。腫瘍が残存しても良性腫瘍ですので、慎重に経過観察を行います。

内視鏡

内視鏡を鼻腔に挿入し、蝶形骨からアプローチします。


鼻腔から挿入した内視鏡により鼻粘膜を切開し、蝶形骨を経由して腫瘍を切除します。

■放射線治療
頭蓋咽頭腫に対して、いろいろな種類の放射線治療があります。ガンマナイフ、サイバーナイフなどの治療があります。放射線治療の利点は、手術が必要ないこと。通院で治療が可能な場合もあることです。

不利な点は、時として腫瘍の増大を抑えきれないこと。2次発がんの可能性があることです。

頭蓋咽頭腫の予後

手術治療と放射線治療の組み合わせなどにより、近年頭蓋咽頭腫の予後はかなり改善しています。術後にホルモン補充などの投薬が必要になることもあります。



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