「人間ドック」とは?

検査書類を持つ男性

自分に必要な検診を受けておくことが、人間ドックの賢い受け方!

病気の予防や発見に役立つ「人間ドック」。生活習慣病発見が中心の会社の健康診断と違い、人間ドックは時価でピンからキリまであり、何を調べるのかによって価格が違ってきます。ラーメンのトッピングと同じで、検査項目を増やすと料金が加算されるという仕組みです。

特に癌を見つける画像診断は高価なものが多く、人間ドック価格差の一番の理由と言えるでしょう。しかし、値段も値段ですので癌検診にはかなりの効果があるとも期待されています。それ以外にも、最新の画像診断機器など高価なものもあり、自分に必要とされるものを適切に選ぶのが人間ドックの賢い受け方なのです。

時価が基本の人間ドック……適切な組み合わせのパターンは?

実は人間ドックは時価が基本。とはいっても、寿司屋のおまかせとは違い、施設ごとの基本料金があります。いわゆる1日ドックだと5~10万円、2日ドックだと10~15万円以上ぐらいが相場の目安でしょうか。ここに検査項目を増やすと料金が加算され、高価な診断装置を用いる検査を受けると料金がそれに乗じて高くなります。

平均して、人間ドックは5万~30万円が時価の相場ということになるでしょう。「検査料金が安いから、いい加減」ということは全くないので、自分の希望に合うものを探して調べてみるのもいいでしょう。

寿司の1人前の場合は、ネタが大体決まっていますが、人間ドックの組み合わせパターンは決まっていません。会社の健康保険組合で実施される人間ドックも、実は会社によって違っていたりするのです。早期発見を第1に考え、組み合わせるのが普通の考え方です。また、検査に伴う事故が起きる可能性が高い検査は通常実施しません。

1日ドックの基本パターン

どの検査で何がわかるか理解しておくことが大切です
どの検査で何がわかるか理解しておくことが大切です
医学的な検査の分類は臓器別にすると細かくなり過ぎるので、ここではやや大胆ですが2つのパターンに分けて解説します。

検査結果について、数値や文字で診断が出る「文字系検査」は健康の基準範囲「内」「外」、レントゲンなどの画像を見て診断する「画像系検査」は、画像に異常「なし」「あり」と説明を受けることになります。

1日ドック基本パターンの一例を示します。費用は5万円~10万円程度になります。

■数値や文字で診断が出る「文字系検査」
  • 身体計測:身長、体重、血圧
  • 検体検査:血液、尿、便検査
  • 生理検査:心電図、肺機能検査
  • 感覚器 :眼科検査、聴力検査
■画像で異常の有無を見る「画像系検査」
  • X線検査:胸部撮影、上部消化管造影(食道・胃・食道)
  • 腹部超音波検査:肝臓・胆道系(胆嚢・膵臓)・脾臓・腎臓
ここからどんなことがわかるかというと、まず、肥満・高血圧・高血糖・高脂血症・痛風などの「生活習慣病」については一通りのことがわかり、臓器別では心臓、肺、食道・胃・十二指腸、肝臓・胆嚢・膵臓・脾臓、腎臓についてもある程度わかります。上記で抜けているのは、脳、尿路系(尿管・膀胱)、女性の乳房などです。

次に、「30~40代の人が受けておいたほうがよい検査」について解説します。

緑内障や糖尿病を予防! 30~40代の人が受けるべき検査

人間ドッグの検査項目に決まったものことからもお分かりかと思いますが、医療者によっても推奨する検査内容には差があるところかもしれません。ここでは、基本的検査に付け加えて、30~40代の人が受けておいたほうがよい検査として、次の3つの条件を満たすものを考えてみたいと思います。

  1. 急には進行しないもの
  2. 進行すると元に戻らず、元気な体で仕事ができなくなるもの
  3. 早期に発見すれば進行を食い止めたり、遅らすことができるもの

この3条件を満たしている病気は、緑内障や糖尿病(網膜症・腎症)、ウイルス性肝炎です。検査を受けておいても損はないでしょう。

■緑内障
働くことが難しくなる原因の一番は、中途失明です。中途失明の原因で自覚症状が乏しく、早期に発見すべきものは「緑内障」。緑内障は視野検査を実施しないと見落とされる可能性があり、最近の調査では40歳以上の20人に1人が罹患していることもわかっています(日本緑内障学会,2001年現在)。

視野検査に専用の機械が必要で、その上に時間がかかるので通常の人間ドックの眼科検査の項目には入っていません。是非、実施すべきです。

■糖尿病
日本人の糖尿病の患者数は約690万人で、その予備軍を含めると1370万人にものぼると言われています。糖尿病という病名を聞くと、尿検査で判明しそうですが、血液検査でも判定可能。また、糖尿病性網膜症の診断には、眼科の眼底検査が不可欠です。

日本では毎年新たに1万人が新規に人工透析を受けています。そのうち半分は糖尿病腎症によるもので、人工透析となると週3回の透析が必要となり、国内出張は可能ですが海外出張は困難となります。糖尿病性腎症は、糖尿病の治療により進行を遅らすことがある程度可能です。

■ウイルス性肝炎
ウイルス性慢性肝炎は進行すると、肝硬変になり最終的には死を迎えます。最近、C型肝炎は早期に治療を開始すると進行を遅らせることが可能となってきています。

最後に、がん検診の種類と検査方法について解説します。

高まるリスクを回避! 40代以降で推奨される「がん検査」

まめな検診により将来発生するリスクを回避できます
癌は年齢でその危険度が異なり、30代での癌に関する精密検査が意味があるかは疑問。もちろん一概には言えませんが、ひとつの目安として、癌検査がある程度意味を持ち始めるのは40代からだと考えています。その理由は、男女ともに50代になると癌の発症率が一気に高まるから。医師としては、40代からこまめに検査しておくことをお薦めします。

特に早期癌の治癒率は、医学の進歩に伴いとても高く、手遅れになる前に受けておくことをお薦めします。また、親族が癌にかかったことがある人は遺伝的要素もありますので、特にお薦めします。

癌検診のうち、人間ドックの有用性があると言われているものは肝癌、大腸癌、乳癌の検査です。

■肝癌
ウイルス検査で陽性が続くと肝癌の危険性が高まります。ウイルス感染の既往は血液検査で判明します。

■大腸癌
便の潜血検査を実施します。専用の容器を用いて行います。もし陽性ならば後日に大腸内視鏡検査を考えます。

■女性の乳癌
マンモグラフィー検査といって乳腺撮影用のX線検査の装置で乳房を検査します。実は多くの2日ドックでは乳癌検査を取り入れるので料金が女性の方が高くなっています。


がんの発見に有用な検査「PET-CT」

PET(Positron Emission Tomography) first!」という標語があるくらい、他の画像検査で見つからない悪性腫瘍をPETでは見つけることができます。しかし、PETを含む人間ドックは20万円~30万円が相場。ちょっと高いかもしれませんね……。

PETは空間的に(解剖学的に)どこに病巣があるのかはっきりしないので、CT(Computed Tomography)と組み合わせるPET-CT(PET/CT)が癌検診に威力を発揮すると期待されています。医学的には腫瘤を作らない白血病、臓器では胃癌、肝胆道系、尿路系(腎臓・尿管・膀胱・前立腺)では有用性は高くないので、万能というわけではありません。

がん検診で検討したい組み合わせパターン

癌検診に何を組み合わせれば良いかは、その方の生活習慣などによって気になるものに合わせて……となりますが、医師として1つ提案するならば、まずはPET-CTで発見されにくい、白血病や胃癌、肝胆道系、尿路系の検査を入れるのがよいかと思います。

■白血病
血液検査が標準の検査です。血液疾患というと貧血を思い浮かべますが、慢性骨髄性白血病は逆に白血球や血小板の増加が最初の異常です。数の異常はなくても形態異常が最初にみつかる疾患もあります。

■胃癌
検査前に絶食が必要です。バリウムを飲む胃透視検査が標準です。飲みこむのが苦でない方には内視鏡検査も、お薦めします。

■肝胆道系
腹部超音波検査が一般的です。飲酒暦が長いと脂肪肝と言われる可能性が高いです。

■尿路系
腎臓から膀胱までの癌は尿の検査で発見可能です。通常の尿検査は、試験紙で糖、蛋白、潜血(赤血球)の有無を調べるだけで癌細胞の検索とは別です。顕微鏡で尿を見る検査(尿沈渣)や癌細胞を探す検査(細胞診)が必要となります。


以上、人間ドックについて解説してきましたが、検診以上に大切なのは、何といっても日常的は予防です。検診はあくまでも二次予防。生活習慣の改善、たとえば禁煙や節度ある飲酒、適度な運動など、家族と将来のことを考えて一次予防に取り組みましょう! 

人間ドックの費用についてさらに詳しく知りたい方は、「予算10万円以内!人間ドックで選ぶべき検査はコレ」を。また、健康診断に関する情報については、「尿検査・便検査・血液検査…職場の健康診断で何がわかるの?」にも詳しくまとめてありますので、より詳しく知りたい方はご覧ください。
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