新生活のストレス対策にも重要な「睡眠」
春はうれしいこともあるけれど、ストレスも多い季節でもあります。グッスリ眠れば、ストレス解消にもなります。
このような環境変化の激しい時期には、ちょっとした出来事がストレスになり、そのストレスが不眠を引き起こし、よく眠れないことがさらにストレスを増してしまうという悪循環に陥ってしまう方が少なくありません。今回は、ストレスについて理解を深め、ごく手軽に実践できるストレス対処法をご紹介します。
ストレス解消法・対処法は千差万別
「ストレス」という言葉は、もともと物理学で「ひずみ」を表す言葉として使われていたものです。この「ストレス」が、有害な刺激によって体内のバランスを崩した状態を表す言葉としても使われるようになったのは、1974年にハンス・セリエが最初に用いてからです。現在の心理学では、ストレスを総合的な流れとして捉えています。つまり、ある出来事をプレッシャーと感じ、そのために精神的あるいは身体的にいろいろな反応が起きる、といった一連のプロセスがストレスなのです。
ですから、ストレス自体には良いも悪いもありません。例えば、敵に出会ったり危険な目にあったときには、その状況をストレスと感じて体と心が反応し、うまく対応しなければ死んでしまうかもしれません。
しかし、ストレスが限界を超えてしまうことは問題です。動物実験では、対応力を超えたストレスにさらされた動物はみんな死んでしまいます。最近の日本では過労による自殺の増加が問題になっていますが、この多くはストレスによる不眠も原因と考えられています。
ではなぜ、ストレスが起こす反応には、望ましいものと望ましくないものがあるのでしょうか?
私たちは毎日、いろいろな出来事に遭遇していますが、1つの出来事を、ある人は苦痛やストレスと感じ、一方、他のある人はチャンスや良い刺激と受け取ります。
プレッシャーをポジティブに受け取れる場合は問題がないのですが、ネガティブに感じるとそれがストレスとなり、ストレスがたまってくると、寝つきが悪くなったり、熟睡感が得られなくなるなどの不眠に悩まされることも多いものです。
同じ出来事なのに、人によって反応に違いが起きるのはどうしてか、不思議に思われる方もいるかもしれませんが、それは、ストレスが引き起こす身体的あるいは精神的な反応は、ストレスの原因となる出来事の性質だけで決まるわけではないからです。ストレスに対する反応は、人それぞれの物事に対する感じ方や捉え方、考え方にも大きく影響されます。さらに同じ人でも、出来事が起きた時期や周りの環境によっては、全く異なった反応を示すこともあります。
この違いにこそ、ストレスへの対処法のヒントが隠されているのです。
ストレスに適応するための「問題中心対処」「情緒中心対処」
動物達は外敵に出会うと、闘うか逃げるかの反応を示します。人間がストレスにさらされた時にも、基本的には同じように反応します。ですが、いつでも「闘うか逃げるか」という二者択一の行動をとっていたのでは、心身ともにボロボロになってしまいます。
そこで私たちは、ストレスに適応して生き抜こうとします。このときの戦略には大きく分けて2つあります。1つが「問題中心対処」、もう1つが「情緒中心対処」です。これらの対処法によって、ストレスを起こしている原因をなくしたり、ストレスをストレスと感じないようにしていきます。
各方法に沿って、ストレスを解消してぐっすりと眠るための具体的な方法をご紹介しましょう。
まず「問題中心対処」ですが、以下のことを実行するようお勧めします。
・ 段階ごとに問題を考えてみる
・ 問題の解決方法をいくつも考えてみる
・ 出来事の状況をもっと詳しく調べてみる
・ 問題解決のために積極的行動にでる
・ 家族・友人・専門家に相談する
始めの2つは考えるだけですから、眠る前や布団に入ってからでも実行できそうです。ただし、あまり深く考えすぎると、逆に目がさえてしまうので要注意。また、なるべく楽しい解決方法や奇想天外な行動計画を考えることをお勧めします。ワクワクして、良い夢が見られそうですね。
次に「情緒中心対処」ですが、特に「積極的認知対処」と呼ばれているものをやってみましょう。
・ その出来事にプラスの面を見つける
・ 一歩退いて出来事を冷静に見直す
・ どうにかなると考え、心配しないようにする
・ 苦労を良い経験として生かす
・ 物事の処理を妨げないように、心を落ち着ける
・ 最良でなく、その次に良いことでも受け入れる
・ スポーツで気を紛らわす
この考え方を身につけると、「災い転じて福となす」の人生を歩めることでしょう。また、日中のスポーツや夕方の軽い運動による疲労は、睡眠に良い効果をもたらしてくれます。
ストレス対処のための思考の注意点
ここで1つ、気を付けていただきたいことがあります。それは「情緒中心対処」の中でも、自分を責めたり、あらぬ期待を抱いたり、問題から逃げてしまったりすることです。例えば、以下のような行動や考え方です。・ 問題の責任が自分だけにあると思い込む
・ 自分がもっと強い人間だったらと考える
・ 誰かが助けてくれることを願う
・ 良いときのことばかり思い出す
・ 人に当たって気分を紛らす
・ 食べることで緊張を和らげようとする
これらの自責や希望的観測、回避を行うと、逆に不安や抑うつ感が強くなって、睡眠障害がひどくなりますから、できれば避けた方が良いでしょう。(参考:『ストレス・マネジメント入門』 中野敬子・著)
聴くだけで熟睡できる音楽の効果は?
快眠のために勧められている音楽はいろいろありますが、基本的には気持ちが穏やかになる気に入った音楽を聴きながら眠るのがよいでしょう。いわゆる快眠CDのようなものも、数多くあります。私が聴いたものの中では、Amazonでの部門売り上げで以前No.1を記録していた「Dreams」というCDなども印象的です。睡眠の専門医とヴァイオリニストがコラボして作っているため、快眠の効果を考えてよく作られていると思います。面白いと感じたのは、このCDを聴き始めてどのくらいの時間で眠ったかという実験が170回行われており、曲が始まってから平均6分半、最短1分で眠りについたという報告がされていることです。
リラックスできる曲、心を落ち着かせてくれる曲、静かで優しい曲、様々な好みがあると思いますので、その時の気分にもあわせて、自分にとって心地よく眠れる音楽を探してみるのもよいかもしれません。
快眠リズムを作る上でウォーキングも有効
健康意識が高い人たちの間では、マイペースで行えて体への負担も低くしかもお金が余りかからない有酸素全身運動である「ウォーキング」が以前から人気です。ウォーキングは、ストレスの解消になるだけでなく、自律神経のバランスを整えたり軽い疲労をもたらしてくれるので、睡眠にも良い効果があります。
早朝のすがすがしい空気の中を歩くと気分が良いのですが、朝は時間がないという場合、ナイト・ウォーキングに挑戦してみましょう。夜遅くなると逆に睡眠に悪影響が出ますので、夕食前か、夕食後1~2時間たった頃に、のんびりゆったりとした気分で歩きます。
歩きやすい服装とシューズで、景色や町並みを眺めながら、ブラブラと20分ほど歩きましょう。暗くなってきたら安全のために、反射板がついたウェアやシューズを身につけたり、人通りがあって明かりもついている道を選んで歩いてください。
ウォーキングには、余分なカロリーを消費して、睡眠中に脂肪が蓄積しにくくなるというメリットもありますよ。
以上、様々な方法がありますので、最近ストレスが溜まっているなと自覚したら、まずは気持ちよくぐっすり眠る方法をできる範囲で工夫して、上手なストレス解消に活かしてください。