食と健康/乳児・幼児・子供の食事・レシピ

子どもにサプリメントは本当に必要?

サプリメントなどを利用経験者は約8割を越えると言われ、子どもにもサプリメントを与えている家庭が増えつつあるようです。子どもにサプリメントを与える際の注意点をご紹介します。

南 恵子

執筆者:南 恵子

NR・サプリメントアドバイザー / 食と健康ガイド

サプリメントなどいわゆる健康食品の利用経験者は、日本でも約8割を越えるといわれています。子どもにもサプリメントを与える家庭が増えつつあるようです。今回は子どもにサプリメントを与える際の注意点をご紹介します。

幼児でサプリメント利用経験者は15%

バランスよく食べていれば、サプリメントは必要ないのかも?

バランスよく食べていれば、サプリメントは必要ないのかも?

様々なアンケートなどでも、子どもを持つ多くの親にとって、「栄養のバランスのとれた食事を心がけたいが難しい」、「子どもの偏食への不安」、などといった考えや悩みを抱えているという報告をいくつか目にします。

子どもの健康や食事が大切だと意識しているからこそ悩むのでしょうが、こうした食事の現状に不安を持つ親にとって、「サプリメント」は不足しがちな栄養素を補える心強い食品と映るのでしょうか。子どもがおやつ感覚で食べやすいように、形状や風味を工夫された「子ども向けのサプリメント」も販売されているようです。

国立健康・栄養研究所発行「健康・栄養ニュース 第32号」に、情報センター/健康食品情報プログラムが行った「就学前幼児によるサプリメント利用についての研究」についての報告が紹介されています。
[対象及び方法]
青森、山形、茨城、栃木、埼玉、東京、千葉、香川の8都県内の幼稚園や保育所に通う幼児の保護者を対象に、サプリメントの利用状況、保護者のサプリメントに対する意識、食や栄養に関する知識についてアンケート調査を2回実施しました。1回目の回答が得られた人数は1,533名、2回目は1,050名でした。

[結果]
サプリメントを通常の食品とは異なる形態とすると利用経験のある幼児は15%、サプリメントの範囲を錠剤・カプセルに限定しても、幼児の約10%に使用経験があることがわかりました。利用されていたサプリメントの成分は、多くがビタミンやミネラルでしたが、中にはハーブなどの天然物も見られました。
~以下略~

本当にサプリメントは必要?

「平成20年国民健康・栄養調査」によると、就学前幼児(1~6歳)の摂取状況で不足が気になるのはカルシウムや鉄で、食事摂取基準と栄養素等摂取量(1日あたり平均)を比べると、
カルシウムでは、600mg に対して412mg
鉄では、5.5mgに対して4.5mg
とやや不足しているはいえ、深刻な栄養失調で、早急な対策が必要な状況ではないと思います。また1-6歳では体格や運動量の差も大きくひとくくりに判断できません。

食事摂取基準はあくまで参考とするもので、一人ひとりの体格・体質などにより適量は差があるものです。厚生労働省でも、この「食事摂取基準」の考え方の一つは、
エネルギー及び栄養素の「真の」望ましい摂取量は個人によって異なり、個人内においても変動するため、「真の」望ましい摂取量は測定する事も算定する事もできず、その算定及び活用において、確率論的な考え方が必要となる。
としています。

また国立健康・栄養研究所サイト「サプリメントと子どもの食事(Ver.100107)」でも、
毎年、国が行っている栄養調査からも、今の子ども達に、早急な対策が必要な栄養素不足はみられないと言えます。
とあります。

安易にサプリメントを与えることのデメリット

サプリメントなどのいわゆる健康食品や、特定保健用食品などは、特定の成分を濃縮したもので、日常の食事をきちんとした上での利用が前提です。

私たちの耳に馴染み深いビタミンやミネラルなども、科学的根拠はほとんどが欠乏症に対する予防効果についてです。ビタミンやミネラルはもちろん他の成分も、どれくらいの量をとればどれくらいの効果があるのかという科学的な根拠は、はっきりしていません。中には安全性や有効性がはっきりしていない成分もあります。しかもさまざまな人を対象にした研究も成人で得られたものが多く、子ども対象で得られたものは極めて少ないのが現状だそうです。
(参考/国立健康・栄養研究所サイト「サプリメントと子どもの食事(Ver.100107)」)

まずは食習慣や生活全体を見直し、改善すべき点は改善した上で、本当に必要なのかどうかを、慎重に考えたいものです。

数字や情報だけにとらわれないで

食事でどれだけの栄養価が摂取できたのか、足りているのかいないのか、育児書通りに成長できているのか、真剣に考えれば考えるほど悩むものですよね。

摂取量などの基準値はあくまで目安。ほぼ毎日規則正しく3度の食事と間食をきちんと食べている。また主食・主菜・副菜とバランスよく食べていて、機嫌よく過ごしていれば、ほとんどの場合は神経質になるような深刻な問題にはならないと思います。

「健康・栄養ニュース 第32号」で報告されていた幼児に与えているサプリメントの内訳は、ビタミン、ミネラルが主体で、その他で多いのは魚油でした。

例えば「うちの子は、牛乳嫌いだし、成長のために」と、カルシウム剤を子どもに与えるとします。カルシウムは骨の成長に欠かせませんが、他にもタンパク質やビタミンDなど様々な栄養素も必要です。また運動等をして負荷を与えてこそ骨は強くなるのです。

また魚油の利用は、魚に含まれるDHAが脳機能を活性化する作用に期待する気持ちが大きいのではないかと想像します。しかし、何を食べれば脳の機能を活性化できるのかというだけでなく、よく噛むことや調理をすることが脳の血流を良くして機能を活性化したり、魚をきれいにほぐして食べる事が手先の器用さにもつながります。

確かに幼児期には、本能的にも酸味や苦みは苦手など、好き嫌いはあります。一つの食材が食べられなくても、他の食材で補えればよいこと。また時期がくれば食べら れるようになることもあります。もちろん親として、時間をあけて再チャレンジするなど、味覚を広げる努力は必要ですが、ゆったりと構えるおおらかさも必要 です。

また幼児は一度に食べられる量も少ない事がありますので、1回の食事でどうしても偏りが出ると思う時には、1日3回+間食の中でバランスを考えましょう。

一緒に食事を作ったり、味わったり、日々の基本的な食習慣を大切にすることが、何をどれだけ食べれば良いのかという健康管理や食文化を伝えることにつながります。

栄養素を口からいれればOKだと満足するのではなく、食事リズムや運動、休息などの生活全体、さらに子どもの情緒性や社会性など、生きる力を育てることにも目を向けていきましょう。

我が子の成長のペースを見守ろう

人の体には、計量カップのように目盛りはありません。何が足りているのか足りないのか、わからないことは不安かもしれません。でも親も経験を積むほどに、子どもの顔色や表情、言動から、「いつもと違う」など様子がわかるものです。

特に幼児期は、同じ歳でも生まれ月などで成長に差が見られるもので、食べる量はもちろん、体の成長や機能の発達具合も、本当に様々です。数字や情報などはあくまで参考として振り回されずに、また他のお子さんと比べて小さい、少ない、遅いというよりも、我が子なりのペースで成長していく様子を見もっていきましょう。

急に、あるいは病的にやせてきたなど、どうしても生活上で不安や問題がある時には、自己判断でサプリメントを選んで与える前に、専門家に相談しましょう。

今回の報告では、サプリメントを利用する親は、メディアや知人・友人から情報を入手し、公的な情報は参考にみていない傾向があることもわかりました。健康食品の安全性・有効性などについては、こちらをご参考に。

関連/
サプリメントとのつきあい方
健康食品の虚偽・誇大表示に注意

参考/
『健康・栄養ニュース 第32号』(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
「サプリメントと子どもの食事(Ver.100107)」(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)
「健康食品」の安全性・有効性情報(独立行政法人 国立健康・栄養研究所)

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