さて次は、就職活動途中に、「特別な自分」にこだわって離脱するパターンを考えてみよう。
途中で辞めるという事は、次なる代案を考えることを放棄したという事。すなわち、第一志望群の会社を二、三社受けて落ち、就職活動を休止してしまう。つまり、「妥協までして就職したくない」という「プライド」が、就職活動からリタイアさせてしまうのだ。
精神科医であり、かつ神戸芸術工科大学助教授で就職委員も担当する香山リカさんは、『就職がこわい』の中で、大学生がフリーター、もしくはニートになる原因を大きく二つ挙げ、双方が矛盾を起こしているとと指摘している。
- 「どうせ自分なんて」…「自分なんか選ばれるわけが無い」という極度の自信の無さ、自己評価の低さ
- 「特別な自分」…「不特定多数を対象とした求人など、自分には関係ない」という特権意識
『AERA』2004/4/5「26歳のハローワーク」に載っていた印象的なエピソード。
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神奈川県内の郵便局に勤める女性(29)は昨年秋から、日本語教師になるための学校に通いはじめた。授業は週末に計9時間。日曜の夜にも復習に追われ、1週間の終わりを告げる「サザエさん」を憂鬱な気分で見ることもなくなった。窓口で切手を売り、貯金通帳を管理する。「虚しいと思ったら終わってしまう」ような仕事を6年間続けてきたが、いま、少しだけ光が見えてきた気がする。
「本当の自分なんて探してみつかるわけじゃない。それは自分のなかにつくるもの。
そんな単純な真理に思い当たったからでしょうか」
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みなさんはここで出てくる29歳の女性のように、ひとつの仕事をやり続けたのだろうか。みなさんはプライベートの時間をつぎ込むほど、今心を縛っているプライドが偽りのないものだと感じられるほど、努力をしたのだろうか。
今のみなさんを縛っているプライドが、いかに薄いものか、果たしてこだわるに値するものか、考えてみてほしい。
少なくとも言えることは、まだみなさんは仕事(アルバイトを除いた)をしていない事実、つまり「天職」だと信じているその仕事が「天職」である証拠は、微塵もないことだ。
彼女のセリフの通り、私も「天職」は探すものではないと思っている。「天職」とは自分のなかにつくるものだ。作るには材料(拠り所)が必要。だからこそ、まず働いてみることが大切なのだ。
根拠無く「特別な自分」にこだわり続けることが、どれだけ馬鹿げていることか、わかってもらえただろうか。
ここでの「妥協」は決して格好悪いことではない。なぜならそれは「天職」かどうかわからない仕事と比較しての話だから。結果、妥協して選んだ会社や仕事が、あなたにとってベストの選択かも知れない可能性を、誰も否定することはできないのだから。
※後編につづく!就職活動からの離脱・第四段階「就職活動終盤」の考察からスタート!