「税源移譲」の余波が年末調整にも!
以前の記事 でもご紹介しましたが、地方分権を税務面から支援すべく、今年、国から地方公共団体へ「税源移譲」が実施されました。サラリーマンの方々も給与から天引きされる「源泉所得税」が減少し、その代わり「住民税」が増加したので、税源移譲を身をもって感じた方も多いのではないでしょうか?
しかしながら、給与への税源移譲の影響はこれで終わり、というわけにはいかないようです。
「経理の仕事」をする方々にとっては「年末調整」、その他の方々には「確定申告」に、その影響が現れてくることになります。
今回は、その影響の現れるポイント、「住宅ローン控除」の変更点について簡単にご紹介していきます。
「住宅ローン控除」が税源移譲の影響を受ける理由は?
「あちらを立てれば、こちらが立たず…」 複雑に絡み合った税の間には、調整が必要なのです。 |
住宅ローンで住宅やその敷地を購入や新築、増改築等した場合に、年末のローン残高のうち一定金額を所得税から控除します、という決まりです。
でもなぜ、住宅ローン控除が税源移譲の影響を受けてしまうのでしょう?それは、住宅ローン控除が「所得税だけ」の特例であるからです。
税源移譲は、国の取り分である税金の一部を地方公共団体へ譲り渡すこと。税の行き先が国から地方に移るだけで、私たちが納める所得税と住民税の合計は基本的に変わらないようになっています。
ところが、所得税負担の減少を受けて、住宅ローン控除の適用を受けることができる金額も減少してしまう可能性があるのです。
仮に今まで所得税の年税額が60万円、住宅ローン控除可能額50万円、住民税の年税額が20万円だった人は、60万円-50万円+20万円の30万円が家計全体の税負担額でした。
ところが、税源移譲により所得税の年税額が30万円、住宅ローン控除可能額50万円、住民税の年税額が50万円となってしまった場合、30万円-30万円+50万円の50万円が家計全体の税負担額(20万円の負担増)となってしまいます。
住宅ローン控除はあくまで「所得税だけ」の特例ですから、たとえ控除可能額が50万円あったとしても、所得税額の30万円が限度とされてしまうためです。
本来は税の行き先が変わるだけの「税源移譲」でしたが、このままでは結果として増税となってしまい、税源移譲がうまく進まない原因となってしまうかもしれません。
ですから、税源移譲による税負担の増加を調整するため、新たに「住民税の住宅ローン控除」制度が設けられることとなったのです。