「寄付金」が税務上経費にならないワケ その2
■誰が「所得の再分配」をするべきか?
国の行う「所得の再分配」は、税のほかにも「年金」等の社会福祉政策によってなされるものもあります。 そんな重要な立場の「国」ですが、現在は…… |
突然ですが、「寄付金」から視野をグッと広げて「日本の経済のしくみ」について考えてみましょう。
日本は基本的に競争原理を基本とした自由経済ですが、自由と言えども「競争」ですから、自由経済が進んでいくと経済面での勝者と敗者の差が顕著になってしまう、と考えられています。
市場原理に任せたままでは格差は開く一方ですから、国家が仲立ちに入って「持っている人」から資産を一部徴収し「持っていない人」へ、その資産を分配し、ある程度社会の平等を保っていく仕組みを取っています。この仕組みのことを「所得の再分配」と言います。
この「所得の再分配」に必要不可欠なのが「税」であり、これを適所に配分するのが国の重要な役割です。
ここで、寄付金が仮に無制限で経費になるとしたらどうなるでしょう? 「寄付金という経費が増える」→「経費が増えると利益が減少する」→「利益が減ると税収が減る」という流れになると想像できます。税収が減少すれば国が行う「所得の再分配」に支障を来してしまうのです。
また、寄付金を支払うという行為は、企業が税を支払うことにより国に「所得の再分配」をお願いする代わりに、企業自らの意思で「ここが足りないのでは」と「所得の再分配」をする行為とも言い換えることが出来ます。
あまり過度に寄付を認めては、企業の意向が強く反映された所得の再分配がなされ、結果として社会的に平等であったり、公平な所得の再分配がなされなくなる恐れがあるのです。そんなわけで、税務上経費と出来る限度額が設けられているのです。
それでも「寄付」は認められている!
税務上、寄付金は経費と出来る金額に限度がある理由を2つご紹介してきましたが、当然「限度額以内」ならば税務上も経費と認められているのです。
それは、国家が行う「所得の再分配」だけでは社会が成り立たないということを国も分かっているからでしょう。
国家が行う再分配の枠組みからこぼれてしまっているところや、枠には入っているのだけれども、金額的に不十分なところなど、たくさんあるはずです。また、国家を超えて海外の国々にもそのようなところがあるでしょう。
そこは堂々と、会社自身で判断して寄付しても構わないのです!
次回以降、実際に会社が寄付する際の経理処理のポイントや、限度額についてご紹介していきます。おたのしみに!
【関連リンク】 『寄付金はなぜ税務上経費にならないの?』シリーズ
・「寄付金はなぜ税務上経費にならないの?(2)」
実際に寄付金を支出し、経理処理する際のポイントをご紹介します。
・「寄付金はなぜ税務上経費にならないの?(3)」
支出した寄付金の分類や、限度額計算についてご紹介します。