「給与」には消費税がかからない
■人材派遣業の「特殊性」とは?
前のページでご紹介したとおり、収入に係る消費税から、経費に係る消費税を差し引いたものが、その事業者が納付する消費税額となります。
それでは人材派遣業を営む会社の場合、消費税はどのようになるか考えてみましょう。
主な収入は「派遣料収入」で、これは「人材派遣」というサービスの対価ですから、消費税がかかってきます。
かたやメインの経費は「派遣する人材に対する給与」です。サラリーマンのみなさんはご自身の給与明細を確認すれば分かるかと思いますが、給与には消費税がかかりません。
もちろん、その他光熱費等の経費には消費税がかかりますが、モノを仕入れて販売するような会社に比べると、経費に係る消費税額が少なくなるのはお分かりでしょう。
収入に係る消費税はあるのに、経費に係る消費税はとても少ないので、結果として他の業種と比べると、納付する消費税が多くなる傾向にある。
人材派遣業はそのような業種の特殊性を持っているのです。
■摘発された人材派遣業社が行った消費税逃れとは?
「消費税は消費者からの預かりもの」そう頭では分かっていても、実際税額が多くなると、少しでも減らしたくなる。 その気持ちは分からないでもありませんが…… 脱税の結末は、とても悲惨なものです。 |
ほとんどの人材派遣業者は、その業種の特殊性を織り込み経営をし、真面目に消費税を納税しているはず。
しかしながら、今回摘発を受けたような業者は納付する消費税額を見て、「何とかコイツを少なく出来ないか……」と頭を捻るわけです。
そして、人材派遣業者が消費税の納税額を抑えるために考えた仕組みとして有名なものが2つの制度を組み合わせたもの。
●制度の1つ目「派遣する人材を関連会社から派遣してもらう」
派遣する人材を自分の会社で直接雇用する形にするのではなく、関連子会社などから派遣した形をとるとどうでしょう。これで、形式上は人材に係る人件費は「給与」ではなく「外注費」となります。
「給与」には消費税はかかりませんが「外注費」は消費税の対象ですから、「経費に係る消費税」が増加することとなり、納税する消費税を抑えることが出来るのです。
●制度の2つ目「納税義務免除の特例を使う」
でも、1つ目だけでは関連子会社において同じだけ「派遣にかかる収入」が発生しますから、企業グループ全体としては同額の消費税納税額が発生することになります。これでは意味がありません。
そこで「資本金1千万円未満の設立から一定期間内の会社は、消費税は免税」という制度を使い、免税になるためだけの子会社を作り、そこから人材を派遣してもらい、免税期間が終わったらその子会社は潰してしまうのです。
これで、グループ全体としての消費税納税額を抑えることが出来ました!というわけです。
この仕組み、今回、国税庁は摘発しただけにとどまらず、その内容を具体的にプレスリリースまでしてきました。
これは「もう、この仕組みを使った消費税逃れは許さない!」という国税庁からの強い警告を含めたメッセージでもあります。
これからは安易にこの方法を用いても、消費税は逃れられないと考えておくべきでしょう。