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終の棲家を奪ったJR脱線事故の今を追う(2ページ目)

4月に起こったJR福知山線脱線事故で、列車が突っ込んだマンションは今、どうなっているのでしょう?現在も補償交渉は完全に解決していません。そこで、マンション住民の6カ月間を追ってみました。

平賀 功一

執筆者:平賀 功一

賢いマンション暮らしガイド

マンション住民に対する補償問題は長期化の様相


JR西日本は6月5日にエフュージョン尼崎の住民に対して説明会を実施し、同社社長は、「マンション全戸を購入時の価格で買い取りたい」と、補償交渉に臨む基本的な考えを示しました。さらに、「事故による心身の不調にかかった治療費の負担」および「新居に移るまでの仮住まい家賃の負担」についても言及しています。

同マンションは2002年に完成し、分譲価格は1800万円~2700万円台(平均専有面積70平方メートル)。線路沿いということで、周辺相場よりは割安な販売価格だったようです。ところが、この割安感が裏目に出てしまい、「購入価格(による買い取り)では同レベルの新居へ移ることができない」ジレンマに陥ってしまいました。そのため、マンション住民はJR側の申し出に納得できず、金額の上乗せを要求しています。

純粋に「元の生活に戻りたい」と願う住民にし、JR側とはかなりの温度差があるようです。

約半数はJR側との補償交渉に合意する


その後、事故から5ヵ月たった9月25日には、当該事故の犠牲者を悼む合同慰霊祭「慰霊と安全のつどい」が営まれました。鎮魂の祈りをささげるとともに、再発防止への誓いを新たにしています。白いユリとカーネーションが供えられた祭壇に犠牲者の名簿をささげた後、事故発生時刻の午前9時18分に黙とう。JR西日本の垣内剛社長は「幸せな皆様の人生を一瞬にして奪い、申し訳ございません」と謝罪し、「全社員が初心に帰って事故の撲滅に取り組み、安全で安心できる鉄道をつくります」と再発防止を約束しました(日経新聞9月26日より抜粋)。

これだけの大惨事を巻き起こした現場目の前に住み続けたいと考える人は皆無でしょう。エフュージョン尼崎に住む47世帯は8月上旬に全員転居しており、現在は誰もおりません。

JR西日本は今回の事故で、事故現場のレール撤去費や犠牲者の葬儀費などで48億円、福知山線運休に伴う減収が24億円、合計で直接の影響額が72億円(2005年9月末時点)に達したことを明らかにしました。さらに今後、新型の自動列車停止装置設置などへの投資として、再発防止のための支出を2006年3月期に別途185億円増額するとしており、業績への影響が広がるのは確実となりそうです。

マンション住民の補償交渉は継続していますが、過半数の世帯がJR西日本との合意に達したそうです(05年10月25日現在)。わずかながらも解決に向けて前進を始めていることが、唯一の救いです。


「終の棲家」として購入した自宅マンションが、一瞬にしてコンクリートのかたまりに変貌した今回の大惨事。遺族の方の心中は察するに余りありませんが、“今”我々ができることは「再発防止」しかありません。そのためにも、今回の事故を風化させない努力が求められます。
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