住宅は「私有財産」であると同時に「社会資産」でもある
200年住宅ビジョンには、以下の2つの柱があります。
- 個人の財産としての住宅価値を維持することはもとより、これを社会全体の資産として承継していくこと
- 超長期にわたって循環利用できる質の高い住宅ストックを形成すること
住宅は、われわれの生命と財産の安全を確保し、また、育児や介護の受け皿ともなる生活基盤です。と同時に、都市や街並みを構成する基本的要素でもあり、都市の活力向上や地域社会の維持形成にも大いにかかわってきます。つまり、マイホームというのは「私有財産」であると同時に、社会的な性格を持つ「社会資産」としての側面も内包するのです。
分譲マンションの大規模開発をイメージすると分かりやすいでしょう。昨今、マンションの高層化・大規模化がめざましいですが、こうした一定のエリアを複合開発した分譲マンションは、明らかに単なる集合住宅(=私的財産)の域を超えています。ショッピングセンターや医療施設、さらには小学校までもが併設され、大きく街並みを変えるからです。
さらに、変えるのは街並みや景観だけではありません。人の流れも同時に変えます。マンションの居住者がそこに住み始めれば、通勤や通学・買い物など、新しい人の流れが生まれます。また、周辺地域からショッピングセンターなどへ買い物に来るという、逆方向の流れも生まれるでしょう。その上、学区域内の保育園や幼稚園、さらに小・中学校に多くの子供が転入します。地域の活性化にも貢献するのです。このように、マンションには「資本財」としての性格が備わっているのです。
「消費型」から「ストック重視型」へと政策転換する
そのため、こうした社会資産としての意味合いをかんがみれば、「長く大切に」使っていこうという発想に切り替えることは必至です。ここでいう長寿命とは、構造上の耐久性だけではなく、ライフスタイルや価値観、さらに家族構成などにも対応できる間取りの可変性も含まれます。また、ロングライフ住宅が実現するには、適時・適切な維持管理が行われることも必要です。そのため、そのインセンティブ(原動力)として、既存住宅が適正に評価される仕組み作りも同時に不可欠となります。
「消費型」社会から「ストック重視型」社会へ――いいものをつくってきちんと手入れし、長く大切に使うというのがストック重視型の社会です。住宅が高耐久化すれば、最終的には我々住生活の安定向上に寄与することになるのです。
200年住宅ビジョン構想は始まったばかりです。実現するかどうかは、つくり手(住宅産業界)の努力と、住み手(消費者)の意識改革にかかってくるでしょう。繰り返しますが、無関心でいられる人は誰もいません。初耳の方は、基本理念を理解することから始めるようにしましょう。
【シリーズ200年住宅】
(1)制度の背景を探る(本コラム)
(2)「家歴書」って何なの?