マンションの「資産価値」とは何なのだろうか?
しかし、引き渡し後、実際に生活を始めてから、読者の皆さんは自宅マンションの資産価値を下げない努力をしているでしょうか? かつて土地神話が健在の頃は、だまっていても地価が上昇したため、特段、資産価値など意識せずとも高く売れたものでした。
ところが、資産デフレが長引き、経年に比例してマンション価値が目減りするようになると、努力なくして資産価値の維持は容易でなくなってしまいました。だからこそ、「資産価値を意識した物件選びを心がけよう」といった啓蒙思想が盛んになるわけですが、快適なマンション生活を送るためには、資産価値の維持向上が欠かせません。
ここでいう「資産価値のあるマンション」とは、構造躯体および各種設備の保守・補修が十分に行き届いており、日常生活が良好であること。そして、適正価格での賃貸あるいは売却を可能とするポテンシャル(潜在能力)を有するマンションを意味します。外壁の一部が毀損していたり雨漏りがする、あるいは、相場に見合った市場流通がなされないマンションは資産価値が高いとは言いにくいのです。
資産価値の維持向上に「家歴書」が一役買う
前置きが長くなりましたが、実は、家歴書には既存住宅が市場において適正に評価され、円滑に流通するための機能が秘められています。どういうことかと言うと、家歴書がその住宅品質を証明する「証明書」に似た役割を果たすようになるのです。前ページで「家歴書は住宅履歴を“見える化”するツール」と説明しましたが、「見える化」=「客観視」できるようになることで、中古マンションの購入を検討している人達に安心感を与えることが可能となるのです。
たとえば犬を飼いたいと思い、ペット屋さんへ足を運んだ際、血統書の付いている犬とそうでない犬がいたら、多くの方が血統書のある犬を選ぶのではないでしょうか? 血統書があることで血筋はもとより、血統以外にも、その犬の生年月日や性別、本犬の繁殖者名、登録上の所有者名などが分かります。血統書は血統登録された同一犬種の父母によって生まれた子犬に対してしか発行されません。そのため、この証明書が「犬質」の良し悪しを判定する情報源となり、この“お墨付き”が安心感につながるのです。
家歴書の機能もまったく同様です。一義的には管理組合が過去の工事履歴を振り返り、間近に予定される修繕工事などの参考資料とするわけですが、同時に家歴書は「将来価値」を予測する情報源ともなり得る能力を内包しています。そして、最終的には住宅流通を促進させる潤滑油としても期待が高まっています。
このように、家歴書は未来へ向けた布石の役割も担っています。家歴書の整備が“未来への責任”につながる日が、目の前まで近づいていると言えるのかもしれません。
【シリーズ200年住宅】
(1)制度の背景を探る
(2)「家歴書」って何なの?(本コラム)