求人広告で月給30万円とあるのを見て応募。採用となって入社したが、実際の給与は20万円足らずだった----もとより出す気もない高額賃金を広告に表示して、応募者を集めるのは詐欺にあたる行為といえますが、現実に、求人広告に掲載された給与見込み額よりも採用時の確定額が低くなることは少なくありません。
面接などで応募者のキャリアや能力がある程度判断できる状況にならなければ、実際の賃金額を決めることはできませんので、見込み額と確定額が食い違うことはやむを得ないこととされています。だからといって、あまりにも開きが大きすぎるようだと困ります。
そこで、東京都の調査データをもとに、見込み額(求人賃金)と確定額(就職賃金)の実態を見るとともに、条件の食い違いに納得いかない場合の対処法を考えていきましょう。
全職種計で4万円もの開きが出ている
東京都の「中途採用者の再就職時の初任賃金(平成16年職種別賃金実態調査)」によると、04年8月1日から同年9月30日までの2カ月間に、都内の公共職業安定所の紹介により就職した人(一般求人で雇用期間が常用のもの。パートタイムなどを除く)の初任賃金平均は20万円ちょうどとなっています。これに対して、同期間に申し込まれた新規求人企業の求人票に掲載された見込み賃金の平均額は24万円でした。就職した人が就職した企業と求人の申込みをした企業とは必ずしも同一ではありませんので確かなことはいえませんが、求人票に記載されている賃金まではまずもらえないものと考えた方がよさそうです。
ちなみに、職種別(調査では38職種)に見たとき、就職賃金が求人賃金を上回ったのは建築技術者(+3600円)のみで、それ以外の職種は全て、マイナスとなっています。参考までに、マイナス額が全職種の平均値以下となっている職種を、マイナス額の大きい順に挙げておきます。カッコ内は(求人賃金-就職賃金=差額)で、単位は千円です。
1 建設の職業 (285-222=65)
2 情報処理技術者 (300-240=60)
3 製図工(トレース・CAD)(250-200=50)
4 デザイナー (245-200=45)
5 土木作業者 (264-220=44)
6 社会福祉専門の職業 (220-180=40)
6 塗装工 (260-220=40)
求人情報誌の出版社やインターネット上に求人サイトを開設している情報提供会社などが会員となっている社団法人全国求人情報協会では、広告掲載基準の中に、賃金については賃金形態、種類、採用時支給額を明記するよう定めています。この基準に沿って、最大手の某社の場合、職種、雇用形態ごとに支給が保証される最下限の金額を表記するよう社内ルールを定めています。
具体的には、「月給25万円以上」とか「月給25万円~30万円」となっている場合、最低でも25万円以上の給与が期待できることになるわけです。
ハローワークにおいても、企業が求人票を提出する際、給与見込額についての指導はなされているようです。それにしても、上記の差額の大きさは納得いきませんよね。
実際には、面接などを経て入社前に採用時の確定賃金額が示されることになりますから、その時点で、希望の給与に満たなければその会社を転職先候補からはずせばいいことになりますが、中には、入社前には賃金額をウヤムヤにしたり、好条件を示しておきながら、入社したあとになっておもむろに、それよりずっと低めの確定賃金額を伝えるというようなズルイ会社もあったりします。
次のページでは、もし、あなたがこのような悪質な会社に引っかかってしまった場合の対処法を考えます。