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労働基準法を知ろう(3) 採用時に交わす労働契約について(2ページ目)

新卒であれ転職であれ、会社で働き始めるときには、賃金や労働時間などに関して契約を結びます。今回は、この労働契約を交わす際に注意したい点を見ていきましょう。

執筆者:西村 吉郎

必ず書面で交付すべき項目については、すべての会社が、労働契約書(雇用契約書)などとして文書化し、使用者から労働者に手渡されなければなりません。

それ以外の項目については、必ずしも労働契約書に盛り込む必要はありませんが、会社の就業規則、労使間で締結した労働協約などにそれぞれの項目に関する規定がある場合には、文書として提示しなければなりません。就業規則や関係する労働協約のコピーなどで代用されることもあります。

法で定められている以外の項目を追加されたら

会社によっては、法律で定められている以外の項目について、契約に追加されることがあります。それが労働者にとって利益になることであればいいのですが、ときには、違法な契約を結ぶことを求められることがないともかぎりません。

労働基準法では、以下の契約について禁止していますので、あらかじめ知っておいてください。

●賠償予定
従業員が退職するときは、補充要員の募集などに掛かる費用の負担することとか、一定の期間以内に退職するときは賠償金を支払うなど、あらかじめ労働契約で違約金や損害賠償額を予定する契約をすることを禁止しています。

技術職などでは、退職して一定期間は同業他社に転職することを禁じ、これに反したときは退職金の全部または一部を不支給とする、などの競業避止契約を求められることもあります。これについても、会社が従業員に競業避止義務を課せるだけの必要性があり、かつ、競業避止義務を課せられる期間や物理的な距離などに応じて代償を与えることが必要とされていますので、一方的に給与の返還を求めたり、あるいは不支給などとする契約は無効となるわけです。

●前借金相殺
その昔は、使用者が自分のところで働くことを条件に、本人や家族の金品を渡し、その返済が終わるまでは労働を継続することを求めたり、賃金から前貸の債権分を差し引くなどの行為が見られたそうです。

さすがに今日ではあり得ないと思いますが、Uターン転職などで、赴任のために引っ越しを伴う場合に、赴任費用として実費分が支給されたり、契約金あるいは支度金などの名目で金銭が支給されることがあります。返済の必要がないものであればなんら問題はないのですが、もし、「働いている間に少しずつ返してくれればいいから」などという話ですと、これは明らかに前借金に相当することになります。注意してください。

●強制貯金
会社によっては社内預金制度を持っているところもあります。会社内部に積み立てるもの以外にも、財形貯蓄など会社を通じて積み立てを行う公的な貯蓄制度もあり、住宅資金などとして積み立てを薦める会社も少なくありません。

このような社内預金に関して、使用者が労働契約に附随して貯蓄の契約をさせ、又は貯蓄金を管理する契約をすることは禁止されています。

ただし、労使間で協定を結び、労働基準監督署に届け出を行っていることや、預金の保全方法など万全な方策がとられていること、一定利率以上の利息を付けること、労働者から請求があったときは遅滞なく貯蓄金を返還するなどの条件を満たしていれば制度として認められます。

当然、大前提として強制ではなく、希望者のみが任意に積み立てを行うものでなければなりません。入社の時点で、もし社内預金制度に関する説明などがあったときは、必ず参加しなければならないのかどうかを確認すべきでしょう。
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