仕事の中の人間関係に心をすり減らし、 心の病に悩む人が急増しています。 |
「心の病」がなぜ起きるのか、その原因を知り、今の勤務先での環境改善を考えたり、あるいは転職先での新しい人間関係に備えるなどの対策を練りましょう。
増え続ける「心の病」
厚生労働省の集計によると、今年度上半期(04年4~9月)に仕事上のストレスが原因で、うつ病などの精神障害を発症したり、自殺したりして、労働者本人または家族が労働災害補償保険(労災)の適用を申請した件数が、昨年同期を上回り、過去最高となりました。一方、財団法人社会経済生産性本部付属のメンタル・ヘルス研究所が8月に発表した「産業メンタルヘルス白書」では、04年4月に全上場企業を対象とするアンケート調査の結果として、「心の病」のために1カ月以上休業している従業員がいる企業の割合は、66.8%であるとの報告がなされています。02年に実施した前回調査では58.5%でしたから、8.3%も増えていることになります。
また、過去3年を通して見て、増加傾向にあると回答した企業は02年に実施した前回調査に比べて、9.3ポイント増の58.2%となっています。この2つの数値だけでみても、状況がますます悪化していることがおわかりいただけるでしょう。
最も多い「心の病気」はうつ病
同アンケート調査で、「心の病」としてどのような疾患が最も多いかを尋ねたものでは、うつ病(気分障害)が85.8%を占め、以下、心身症、神経症(ノイローゼ)、総合失調症(精神分裂病)などとなっています。心身症は、具体的な体の病気を伴うことが普通で、むしろ体の病気と見る専門家もいます。とすると、「心の病気」の9割以上をうつ病が占めているといっていいのかもしれません。では、うつ病とはどんな病気なのかということになりますが、その詳細は、専門のガイド(「心の病気」中嶋泰憲さん)サイトもしくは記事を参考にしていただくとして、はた目からは、元気がないとか、ボーッとしていることが多いなどは感じ取れるのですが、それ以外には身体的には別段変わったところもなく見えるとか。
それでいて、真面目で責任感の強い人ほどかかりやすいということで、たとえ食欲不振などの自覚症状があっても、自分で解決しようとする傾向も強いため治療が遅れ、落ち込みの度合いが進行すると自殺にまで走る人が出るという怖い病気なんですね。
発病者が最も多いのは30代
厚生労働省の「人口動態統計」では、自殺者の数としては50~54歳をピークに、その5歳前後の層が多くなっています。そのため、新聞などでニュースとして報じられる範囲で見る限りは、シニアにこそ発病する人が多いように感じますが、白書によれば、50代以上の割合は5.6%でしかありません。実際には、30代が49.3%と飛び抜けて高く、次いで40代が22.0%、20代が10.4%という具合で、50代はむしろ少数派なんです。
では、なぜ30代に「心の病」を抱える人が多いのか、その原因と対策について、メンタル・ヘルス研究所の研究主幹、今井保次さんへのインタビューを交えながら考えてみましょう。