一説によると、悪徳商法による被害件数は年間1300万件にも及んでいるといわれます。不況や低金利時代を背景に、少しの投資で大きな利益が得られるとか、自宅で月に数十万の仕事ができるなどの甘言につられて、一財産なくしてしまったという例もあとをたちません。
そんな被害に会わないためには、悪徳商法を見抜く目を持つことが大切ですが、転職先探しをしているみなさんにもう一つ気をつけていただきたいのは、悪徳商法を行う側に引き込まれてはならないということです。悪徳商法を行う組織は、カモを探す一方で、商法の手先となって働く人間を探しています。表向きは一般の会社を装って、堂々と求人情報を出す組織もあるということです。
悪徳商法に一度でも加担してしまうと、秘密保持のために容易には足抜けできませんし、待遇だけはよかったりするので、ズブズブと深みにはまっていくことになりかねません。
ここでは、悪徳商法被害者対策委員会(堺次夫会長)からいただいた資料と、東京都発行の資料「契約社会を生きる」をもとに、代表的な悪徳商法の手口を紹介します。仕事内容を聞いて、少しでもあやしいなと思える点があったら、すみやかに逃げることをおすすめします。
●資格商法
これは、資格取得のための講座の受講を電話で勧誘する業務が中心です。仕事としてとくに問題はなさそうですが、その実、肝心の資格は、さもビジネスマンのスキルアップや独立に役立ちそうな名称ででっち上げたニセの資格であったり、実在する資格であったとしても、通信講座で40万円とかの不当に高い受講料を請求することを目的としている場合もあります。売り込みを図る資格名が「○○士」となっていることが多いことから、サムライ商法と呼ばれることもあります。
通常の電話営業であれば、相手から「興味がないから」というような言葉でもあればその場で引き下がるものですが、この商法では、「あなたは××大学の卒業生の中から特別に選ばれた。内々に上司の推薦も受けている。いま講座を受講すれば無試験で資格がとれる。合格すれば、副業で月収20万から30万円になるし、独立すれば月収100 万円以上も可能。新規開業して3年間は、当方で仕事の世話もする」などとの誘い文句を執拗に繰り返し、簡単には引き下がらないよう指示されます。
相手がいろいろ疑問をぶつけてきたら、労働省の認可を受けている団体だとか、新しく創設された資格だからまだあまり知られていないなどと虚偽の説明をする。また、相手が断りのつもりで「けっこうです」との言葉を出そうものなら、「あなたはこちらの説明を聞いてそれで『けっこうです』といった。この時点で契約が成立したことになるから、当方としては早速テキストを送るなどの手配をとる。いついつまでに受講料○十万円を振り込むように」と言いくるめ、あげくに、払わなければしかるべき措置を取るなどというなどの手順もマニュアル化されているようです。