変形労働時間制度に関連する問題
Q 残業時間が多いのに手当の額が少ない
直行直帰が認められるようになり、残業代に代わる、1日2時間の残業時間相当の営業手当が支給されることになりました。しかし、伝票作成などのため会社に戻って事務作業をすることも多く、2時間以上残業するのは当たり前。実態に比べると支給額は少ないように思うのですが。
A みなし労働時間を見直す必要もある
外勤の営業職、雑誌記者など会社の外で業務に従事することが多い労働者については、社内外の労働時間を通算して「1日何時間働いたもの」とみなすことができます。あなたの会社が直行直帰を認めるとともに手当の名目を変更したのは、おそらくこの「みなし労働時間制」を新たに導入したためと考えていいでしょう。
このみなし労働時間制は、業務遂行のためこれまでの所定労働時間を超えて働く必要があることが常態となっている場合に適用されます。所定労働時間はきっちりと仕事をしたことを認め、かつ超過時間分を事前に労使双方でよく話し合ったうえ「労使協定」を締結することによって、1日の労働時間を設定します。
これまでの所定労働時間を超えて設定した労働時間に対しては、当然会社は時間外手当を支給する必要がありますが、みなし労働時間制をとる会社の場合は、一定額の手当として支給することが可能になります。あなたの会社の、一律2時間という時間外労働に相当する営業手当がこれに当たり、実際に時間外労働をしなくても支給されます。
ただ、実態としてどうしても営業手当ではカバーしきれないというのであれば、「労使協定」における、みなし労働時間を再度、労使双方で話し合い、見直す必要があるでしょう。
Q 変形労働時間制で時間外手当がつかない
レジャー関連会社で働き始めたのですが、1日10時間働いても時間外手当がつきません。1年単位の変形労働時間制を採用しているからとのことですが、この制度の下では許されるのでしょうか。
A 変形労働時間制導入に問題がなければ違法ではない
変形労働時間制は、繁忙期の労働時間を長くするかわりに、閑散期の所定労働時間を短くするといったように、業務の繁閑や特殊性に応じて、所定労働時間をあらかじめ傾斜的に配分することを可能にする制度です。1週間、1カ月、1年を単位とする変形労働時間が認められているほか、フレックスタイム制もこの変形労働時間制の一つとされています。
1年単位の変形労働時間制は、季節などによって業務に繁閑の差がある場合に、適用が認められています。この制度を採用するにあたっては、労使協定で対象となる労働者の範囲を定めること、変形期間(1年以内)を平均して1週当たりの労働時間が40時間を超えない、1日10、週52時間を限度とし、かつ1週につき1日の休日が確保されることなどいくつかの条件を満たしたうえで、所轄の労働基準監督署に届け出る必要があります。
あなたの職場がこれらの決まりを遵守して実施されている限りは、あらかじめ10時間と定められている日に10時間労働しても残業代がつかないことに関して、その違法性を問うことはできません。
Q フレックスなのに意に沿わない指示が多い
このほど転職した編集プロダクションでは、フレックスタイム制を導入しています。ところが、チームを組んで業務を進めているので、週に2~3回は早朝や夕方の取材をチーフから命じられます。これでもフレックスタイムといえるのでしょうか。
A フレックス制では出社時間を命じることはできない
フレックスタイム制のいちばんのポイントは、始業・終業の時刻を労働者の自由裁量に委ねるところにあります。にもかかわらず、コアタイム(必ず就労しなければならない時間帯)として定められた時刻以前の早出、以後の残業を会社が命じることは、フレックスタイム制と矛盾します。