ところで、この能力というもの、採用の時点では明確に把握することは不可能です。そこで、多くの会社では、3カ月程度の試用期間を置いて、この間に仕事能力を見極めてから正式に給与を決定する方法を取り入れています。いったん決めた給与を下げることは難しいことから、転職後しばらくは、先輩社員の給与に比較して低めに抑えられる傾向もあるようです。
最近は、給与決定要素の中に年齢が占める割合は年々低くなっています。また、勤続年数を加味する会社もほとんどなくなりました。その分、能力のポイントが上がっているわけですが、採用の段階でこの能力を判断する一番の決め手となるのは『経験』です。とくに、能力を推測する目安として数値で把握できる経験年数が重視されることになります。
では、具体的にこの経験年数はどう評価され、給与に反映されるのでしょうか。以下、東京都が実施した『中途採用者の初任賃金』調査をもとに分析していきましょう。なお、同調査の最新のものは昨年夏に実施されていますが、詳細がまだ公表されていないため、平成11年度版のデータを使用しています。
経験の積み重ねがそのまま給与に反映される職種
前ページに掲示したグラフは、経験1年未満の人に対する賃金を基準にした場合、「経験1~4年」「経験5年以上」の人がこれを何%上回って(あるいは下回って)いるかを示しています。このグラフを見てもわかるように、経験年数による給与のアップ率には職種により大きなバラツキがあります。
「1年未満」と「5年以上」の比較で、経験により優遇されることが期待できるのは機械技術者、電気技術者、建築技術者、情報処理技術者、デザイナー、会社・団体の管理の職業、理容師・美容師、一般機械器具組立・修理、電気工事作業者、建設の職業など。保健医療関係の職業、会計事務員、販売外交員、調理人・バーテンダー、印刷・製本の職業などもまあまあ期待が持てます。
経験に応じて給与もアップする仕事は、技術や知識の蓄積が付加価値を生む仕事であるということができます。技術系職種は全般に、経験年数がストレートに評価されやすいといえるようです。
ただ、技術職など仕事にある程度の知識や技能を求められる仕事は、自立して働けるようになるまでには相応の時間がかかります。そのため、経験が浅いうちは会社にとっては教育研修などによる持ち出しも計算しておかなければなりません。したがって、経験はあっても一人前として評価できないうちは、給与も低く抑えられることが少なくありません。データでもわかるように、機械技術者、電気技術者などでは「1~4年」の経験では必ずしも給与に反映されるわけではないことは、こうした会社側の思惑が現れているのだろうと推測できます。